『Web3とメタバースは人間を自由にするか』(2022年、KADOKAWA)という本で書きましたが、Web3という概念のひとつに「トークンエコノミー」があります。
トークンという通貨の一種を発行することによって、個人をとりまく新しい経済をつくるもので、みんなで出資しあう形態です。
つまり、ある意味、全員が全員の投資家であり、投資される側でもあるということです。
今の40代や団塊ジュニアの成功者は、「自分のやりたいことで生きていこう」と言いますが、そんなことができるのはごくわずかです。ほとんどの人は、自己実現と生活のお金を得ることがイコールにはなりません。
その時に、何が人々の生きがいになるのか。僕は、人を応援するということがそれになり得ると考えています。
人を応援することは生きがいになる
2000年代初頭、SMAPが『世界に一つだけの花』で、ナンバーワンでなくオンリーワンだと歌いました。多くの人はあの歌詞を評価しましたが、オンリーワンになるにも、そのための努力が必要です。
すると、「能力のない自分は、オンリーワンにさえなれない」となる。そこで、人を応援する、推すという行為なら、誰にでもできるということになります。誰かを推す、それをお金で行うことが投資家です。
「推し活」という言葉がありますが、ここにもコミュニティーがあります。単にそのアイドルと自分だけの1対1の関係ではなく、推し活仲間には、横のつながりがあるのです。
宗教に置き換えて考えることもできます。日本の伝統宗教は、葬式仏教しかなく、それはほぼ役割を果たしていません。かと言って、新宗教には、アレフや世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のイメージがあり敬遠される。そこで、スピリチュアルに走る人が現れるわけですが、それでは根源的な人間の苦しみは癒されません。
そのとき、宗教の代わりになるのは、推し活ではないかと考えられるわけです。推し活で使われる「聖地」「布教」「お布施」「尊い」などの言葉は、宗教的な意味を含んでいますよね。
貧しいとは言っても、生活は保障されており、テレビもあるし、無料で配信動画も見られるという中で、「生きがいをどうするか」というところにスタイルが行き着く。それが推し活であり、つまりは投資家でもあるのです。
本書を読むと、エリオット・ビズノーたちが、図らずも、こういった志向の変化を実践していることを感じられました。
(後編に続く)
(構成:泉美木蘭)
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