「推し活」は現代の宗教的コミュニティーである 『MAKE NO SMALL PLANS』で読み解く時代変化

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コミュニティーは大事だと思います。企業の目的とは何なのかという文脈で考えてみましょう。

日本の場合、かつて会社は、従業員のためのものでした。それが、だんだんと内向きの論理になり、グローバリゼーションの2000年代になると、株主のために価値を還元しましょうという流れになった。

それには、日本の内向きの論理に風穴を開けるという意味で良い面がありましたが、一方で、株主だけが恩恵を受けるようになっていきました。

ネガティブな効果がたくさん現れ、ブラック労働が蔓延し、非正規雇用が急増。管理職になっても何も得るものがなく、給料も上がらず、仕事が増えるだけ。

そこで、もう一度会社にとっての目標や価値とは何なのかというムーブメントが2010年代後半ごろに起きた。エシカル、SDGs、パーパスなどの言葉はこの頃に登場したのではないかと思いますが、僕は、それらを上っ面のものに感じています。

例えば、SDGsの「17の目標」は、冒頭に、貧困と飢餓の撲滅をうたっています。ところが、実際に語られるのは、海洋プラスチックゴミを減らすというような環境問題ばかりで、誰も本気で貧困や飢餓について意識していません。

現代的なコミュニティー志向の一例

一方で、従業員もお客さんもみんな仲間だという考え方は、希望が持てると感じます。

例えば、全国のゲストハウスと契約して、月額数万円の定額で移住しながら泊まれるようにしたサブスクリプションサービスを提供するADDressという会社があります。

それぞれのゲストハウスに管理人がいて、その人が地元のコミュニティーと宿泊客とをつなげる役割をしており、コミュニティー化が強い会社です。

ADDressは、先日増資しましたが、その元手はクラウドファンディングでした。上限1億円ほどの募集でしたが、2日間で数百人から投資があり、満額集まったのです。

ほとんどは「ADDressのコミュニティーが好き」という人です。投資するけれど、仲間でもある。金儲けのためではなく、応援するための投資があるわけです。まさに現代的なコミュニティー志向の一例です。

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