変形地で「トンデモ物流施設」が開発される事情 「投資過熱」の異常相場はついに終焉を迎えるか

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収益源である貸付面積をギリギリまで増やそうとする努力は、トラックの通行路にまで影響を及ぼしている。施設の奥側の倉庫部分につながる通行路は、幅が狭く車両が1台しか通れず双方向で通行ができない。そのため、信号機を設置して交通整理することで、車両の行き来を可能にしている。

同施設のリーシング担当者は「トラックバースを100台分確保しており、運送企業が配送拠点としても使える設計だ。テナント候補からも好評であり、施設の引き合いが強い」と強調する。2023年8月中旬時点では、2~3階部分のテナントが未定のようだ。

「土地の争奪戦が激化している」

荷物の保管や作業の効率、トラックの運行のしやすさを考えるならば、物流施設は整形地で開発するのが望ましい。それでもなお変形地で物流施設が開発されるのは、「新規参入するデベロッパーが増え、土地の争奪戦が激化しているため、変形地でも物流施設を開発しなければ事業機会がなくなってしまう」(オリックス不動産の関係者)からにほかならない。

大手デベロッパーといえども土地の争奪戦は避けられない。各社、工夫をこらしながら開発用地を確保しているのが実情だ。物流施設専門デベロッパーのシーアールイーの小泉武宏取締役は、「ほかのデベロッパーと競合しない市街化調整区域だけでなく、土壌汚染地を再生するなど独自の方法で開発用地を確保している」と語る。

また、三井不動産の物流施設事業を統括する三木孝行専務執行役員も「土地を保有する企業との共同事業などさまざまな事業機会を獲得していく」と話す。

特殊な構造をした物流施設も、供給を需要が超過していたコロナ禍前であれば短期間でテナントを決められただろう。だが、目下、首都圏では物流施設の空室率が上昇しており、空前の活況は終わりつつある。

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