時短が目的化、学校の働き方改革「仕事減らないのに早く帰れ」に欠ける5つの視点 なぜ先生たちは忙しいのか?多忙の真の要因

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22年の大きな特徴の1つは学校行事の負担が減っていることである。保護者の期待や見栄えを気にした、派手な学校行事の運営や過度な準備は要らないと思うが、コロナ禍のため、一時的に短くなっているだけという事情もあるかもしれない。

第5に、授業準備と研修が細っている。ここ15年余りで教科数や授業コマ数が増えているにもかかわらず、それほど授業準備時間が増えていないのは、授業準備が薄くなっている可能性を示唆する。

実際、多くの学級担任などから聞くのは「放課後の業務といえば、生徒指導事案や保護者対応が第1で、次に、周りの職員に迷惑をかけてはいけない校務分掌などの事務をします。授業準備はいちばん自分の裁量で進められるし、同僚に迷惑をかけるものでもないので、最後になることが多いです。まあ、手抜きもできると言うか……」といった言葉だ。授業準備が自宅への持ち帰り仕事や土日の業務になっている教員も多いことだろう。

研修は、OECDのTALIS調査から、諸外国と比べて日本の教員は少ないことがわかっているが(調査項目としては「職能開発」)、ここ15年余りでも減少トレンドである。前述の対話や議論が少なくなっているのではないか、ということにも通じる問題で、同僚性やチームワーキングにも影響する。

また、1952年調査では表の一番下のほう、「個人的研究」が1時間近くあった。具体的な内容は不明だが、おそらく教員には自己研鑽や探究的な時間があったということだろう。こうした豊かな時間が専門職としては重要だが、2000年代以降、おそらくほとんどの教員にとって、こうした「ゆとり」はない。

何が必要か

以上5点に整理したが、こうした診断、ごく簡単な分析をベースにしても、これからの働き方改革を考えるうえで、必要なことが見えてくる。いくつか例示しておきたい(番号は先ほどの5点に対応)。

1. 教科指導の負担軽減のため、正規の教員を増やして、1人当たり持ち授業数を減らすこと。あるいは学習指導要領の見直し(内容の精選、標準授業数の削減など)や補習の削減などを進めること。

2. 会議の精選や効率化は必要だが、忙しい日々を少し立ち止まって、教育活動などを根本から見つめ直す場は大切にすること。

3. 保護者などからの理不尽なクレームや要請については、学校任せばかりにせず、第三者的な機関が支援・仲裁できるようにすること。

4. 生徒指導(集団)とカテゴライズされているような生活指導、見守りについては、教員免許が必要なものではないので、教員以外のスタッフと分担できるように、増員を図ること。学校行事をはじめとする特別活動は、協働的な学びなどの点で重要であるが、意義や必要性、優先順位を各校で検討して、精選すること。

5. 勤務時間の中で無理なく授業準備や職能開発ができるような教職員定数などの体制づくり。ただし、個々の学校、学級で従来のような授業がどこまで必要なのか、動画教材などの活用なども含めて、国や研究校などであり方を模索していくこと。

1950年代までさかのぼるのはやりすぎだったかもしれないが、データを見ながら、何が多忙の要因となっていて、何が必要なのか、今一度冷静に考えていきたい。

(注記のない写真:megaflopp / PIXTA)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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