479万円の「セレナ LUXION」は誰のための車か 他のミニバンとは異なる最上級グレードの本質

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トヨタには「MIRAI」やレクサス「LS」など、ホンダでは「レジェンド」(現在は販売終了)に制限速度領域まで使えるハンズオフ機能を持つクルマがすでに販売されており、日産でも「スカイライン ハイブリッド」(販売終了)や「アリア」などに同機能が搭載されていたため、機能として目新しいものではないが、ミニバンでの採用はセレナ ルキシオンが初だ。これは大きなトピックである。

ルキシオンが、ほかのグレードと異なり、センターコンソールが大型化されていることや7人乗りとなっていることはすでに説明したが、それもプロパイロット2.0搭載に関係してのこと。

運転席/助手席間に大型のセンターコンソールが設置されていることがわかる(写真:日産自動車)
運転席/助手席間に大型のセンターコンソールが設置されていることがわかる(写真:日産自動車)

プロパイロット2.0は、安全のために冗長性を高めた設計となっていて、たとえば電源系統には予備の回路を搭載している。大型センターコンソールはバックアップバッテリーを搭載するためであり、スマートマルチセンターシートがつかないのもそれが理由だ。

また、正確なステアリング操作のために「デュアルピニオン式」と呼ばれる、このクラスではめずしい高価なパワーステアリング機構をセレナ全車に採用。ルキシオンでは、ステアリング操作の正確性を高めるために、タイヤも走行性重視のものを履く(ただし、乗り心地は若干犠牲になっている)。

実質的な“プロパイロット2.0代”は50万円程度

このルキシオンが向いているのは、ズバリ“高速道路移動が多い人”である。高速道路でドライバーを助け、疲労を減らすことが最大の特徴だからだ。上級グレードだからと後席の豪華さを期待すると、本質を見誤ることになる。一般的なミニバンの最上級グレードとは、大きく方向性が違う。

最後に価格の話をすると、冒頭で説明したように他グレードに対して111万円強高いのは事実である。

NissanConnectナビゲーションシステム(写真:日産自動車)
NissanConnectナビゲーションシステム(写真:日産自動車)

しかし、もう一度よく装備表を見てみると、他グレードでオプション扱いとなっているカーナビが標準装備となっていることがわかる。

セレナでは、カーナビにアダプティブヘッドライトやカメラ式のデジタルルームミラー、ドライブレーコーダーなどを組み合わせたセットオプションが、およそ50万円で設定されており、セレナの上級グレードを買う人の多くはこれを装着する。それを考慮すれば、価格差は61万円程度まで狭まる。

高速道路でのプロジェクト2.0の有用性を確認した試乗であった(筆者撮影)
高速道路でのプロジェクト2.0の有用性を確認した試乗であった(筆者撮影)

駐車枠への前後移動が車外からリモコン操作でできる「プロパイロットリモートパーキング」もルキシオンには標準装備されていることを考えれば、実質的な“プロパイロット2.0代”は50万円程度と言っていいだろう。

さらに残価設定ローンを活用して買えば、支払総額の差も縮まるの。絶対的に高価なのはたしかだが、高速道路利用の多いユーザーなら検討する価値は十分にあるだろう。

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工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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