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今林:その備えとして、ハードウェアも含めた垂直統合も考えています。イメージしているモデルがAppleなんですよ。
AppleはMacの新機種向けにM1チップやM2チップを内製し始めました。われわれも、旧・東芝メモリホールディングスのキオクシアと提携して専用ハードウェアの研究開発を始めました。データを圧縮してそれを高速に計算するには、やはり特別なハードウェアがあったほうがいい。
AIでいうエヌビディアのGPUのような高速アクセラレータを作ることができたら最高です。歴史的に見ても、AIが広まったのはエヌビディアというユニコーンのハードウェアの会社があったからです。もともとゲーミング用のハードを開発していたのですが、AIにも転用して大成功した。
パソコンもそうですよね。インテルがいるからこそ、どんどん処理スピードが上がってきた。
ハード展開は持たざる経営で
井上:ハードウェアというと、ものすごくコストがかかりそうですが、何か工夫されているのでしょうか。
今林:実はわれわれ自身がハードウェアを持つ必要はないんです。
われわれはソフトウェアの知財をパートナー企業に提供する。パートナーさんは、その卓越した技術でハードウェアを提供する。両者で共同開発しています。そして、そのハードウェアと一緒にわれわれの「AI×秘密計算」のソリューションを拡販していくんです。
いわゆる持たざる経営です。ソフトバンクが買収した半導体のアームに近いようなイメージですね。EAGLYSは、設計図だけを持つようにするんです。
井上:得意分野で貢献できるプラットフォームというのは素晴らしいですね。日本発のGAFAを目指して頑張ってください。
EAGLYS 設立:2016年12月 所在地:東京都渋谷区 資本金:1億円(資本準備金含み、17.5億円) 従業員:45名 投資ラウンド:ミドル
経営学者・井上達彦の眼
ビジネスモデルの価値を生み出すドライバーの一つに「引き合わせる力」というものがある。本来であれば、結びつかない両者の縁結びをして、そこから価値を生み出すタイプのビジネスモデルだ。
古くは、地理的に離れた生産地と消費地を結びつける商人のビジネスモデルがこれに該当する。お茶、香辛料、絹が陸路や海路で運ばれて、売買差益を生み出してきた。
近年、ICT技術の発達を背景に、「引き合わせる力」を生かしたモデルが多様な形で実現するようになった。
例えば、フリーミアムというモデルもこれに該当する。最初から有料であれば購入していなかったであろうサービスを、無料ということで試し、購買の意思決定をする。生産や流通にかかる限界費用が小さいデジタル財をインターネットで提供するからこそ、成り立つビジネスモデルである。
ここで紹介したEAGLYSのビジネスモデルは、この「引き合わせる力」を異次元にまで高めうるものである。秘密計算による価値の創造を前提に、本来であれば収集できなかった機密情報を、暗号化されたまま統合して、暗号化されたままAIによって秘密計算する。そして、それによってしか得られない、より完全な情報を必要な人たちにマッチングさせるのである。
情報の完備性が高まれば、神の見えざる手がうまく機能し、最大多数の最大幸福が実現するというのは、古典的な経済学の基本である。クラウドの上にあるAIが神だとすれば、人類はまた一歩その領域に近づけるのかもしれない。