今林:例えば、振り込め詐欺の防止です。
従来の詐欺だと3月1日から3月31日までの間に100万円が一度に振り込まれるパターンとなります。当然これは怪しいので、それに対するフィルターは各銀行がすでに実装しています。シグナルを拾って不正検知できる。
しかし最近のトレンドだと、例えば10万ずつ、10回に分けて定期的に振り込まれたりします。普通の振り込みのように見えるのでわかりにくい。それでも時々振り込みがなかったりすると、これはちょっと怪しいということになる。ただし特定の銀行で新しい不正パターンが見つかっても、それが他行に共有されるわけではありません。
別の銀行では、どんどんどんドーンと振り込まれる、20、20、20、40みたいな感覚で、これを3カ月にわたって振り込まれるという新しいパターンが見つかったりして、新しい識別ルールが作られる。しかし、やはり他行には共有されない。
銀行からもらった「お墨付き」
これらの分有されている識別ルールを、われわれのプラットフォームを介して共有できれば、振り込め詐欺を防げるようになります。
世の中のすべての不正な事象というのがパズルのピースのように散らばっていて、その各ピースを全部集めていくイメージです。不正の断片情報をたくさん集めてAI解析にかければ、より完璧な不正フィルターができる。
井上:なるほど。それぞれの銀行が持っているデータに秘匿性があったから集められなかった。でも、暗号化された状態でAI解析ができるから、解析を前提に収集可能になる。
信頼を勝ち取るために何か工夫されたのでしょうか。
今林:一番はじめは、国立研究開発法人のNICT(情報通信研究機構)のプロジェクトとしてスタートしました。そのときに日本経済を支えるメガバンクを含む大手金融機関5行の協力を得て実証実験に成功しました。「これは有意義だ」とお墨付きをいただきました。
井上:「AI×秘密計算」によって実現するビジネスモデルはどのようなものでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら