「人一倍勉強しなさい」指示され育った少年の悲劇 中学生になっても平然と「携帯を監視」した親

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中学2年生のときに、初めて両親にキレて不満をぶつけましたが、両親はこのときに気づくべきでした。トモヤからのわかりやすいSOSです。よく話を聞いて、子育ての方針を修正することができれば、その後に大きな問題が起こる危険性は減ったに違いありません。多少の問題があっても、うまく対処して乗り越えていくことができたのではないでしょうか。

ところが両親は聞く耳を持たなかったので、トモヤは失望し、完全に親を信頼できなくなりました。表面上は言うことを聞いておき、家を出て自由になることだけが目的になったのです。

少年鑑別所での面接の際、トモヤは「マナとの交際を卑劣な方法で否定された。あいつらは最低だ」と両親への怒りを激しい言葉で語りました。彼にとっては相当ショックな事件だったことがうかがえます。両親に敵意に近い感情を抱いており、親子関係の調整が難しいケースであると感じました。

教育とマインドコントロールは紙一重

トモヤは高圧的な親から逃げることを選択しました。しかし、逃げることができない人たちもいます。極度に高圧的な親のもとでは、心理的に拘束され、親の言う通りにしか動けなくなってしまうのです。

たとえば、外出や買い物などあらゆることに親の許可を必要とし、行動を制限する。親の言うことは絶対で、口答えをさせない。支配下から逃れようとすると何かしらの罰を与える。

このように支配されると、子どもは常に親の顔色をうかがうようになります。自分から積極的に行動することができず、やりたいことがあっても、まず「親はどう思うだろう」と考えます。次第に、自発的に考えることをやめてしまい、何でも支配者の言う通りに動くようになってしまいます。もはや「逃げたい」とも考えません。これはまさに「マインドコントロール」です。

マインドコントロールという手法は、近年の旧統一教会関連のニュースでも聞かれますが、日本では最初、オウム真理教事件で有名になりました。天才、秀才と言われるような若者が多く入信し、「地下鉄サリン事件」ほか次々と凶悪な事件を起こした背景には、マインドコントロールがありました。

普通の感覚からすると「なぜ、そんなに頭のいい人が異常な行動をとるのか?」「おかしいと思わないのか?」と理解に苦しみますが、支配下に置かれた者は、何でも支配者の言う通りに行動するようになってしまうのです。

当時私は東京拘置所に勤務していたため、多くのオウム真理教関係者を心理分析しました。「これをしなければ、こんなに悪いことが起こる」「ここから抜け出せば、こんなに酷いことが起こる」と、長い期間にわたって繰り返し刷り込まれてきており、支配から抜け出すことがいかに難しいかを実感したものです。

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