「人一倍勉強しなさい」指示され育った少年の悲劇 中学生になっても平然と「携帯を監視」した親
トモヤは表向きは父親に逆らわないようにしながら、家を出ることを目標にした。東京の大学に進学すれば自由になれる。勉強なんてどうでもいいし、とくにやりたいこともなかった。どうせなら、いままで禁止されていたことをやろう。そうしてひとりで生活する中でパチンコにハマったのだった。
あるとき、パチンコ店で出会った同年代の男、タケルに声をかけられた。
「簡単だけど稼げるバイトがある」
タケルもトモヤと同じようにパチンコにお金をつぎ込んでおり、経済的に困窮していた。その高額バイトによって助けられたという。インターネットを通じて指示を受け、その通りに動くだけでなんと1回10万円ももらえるらしい。それも、指定の住所に住む人から紙袋を受け取って、それをコインロッカーに入れるだけという簡単なものだ。
タケルは闇サイトを見せながら、ヘヘヘと笑った。これは……、やばいやつなんじゃないのか。トモヤは犯罪の匂いを感じた。
しかし、何も知らない、何も気づいていないことにした。何かあったら、「そんな説明は受けていない」「自分は何も知らなかった」と言えばいい。そう思えば躊躇はなかった。こんなおいしい話に乗らないわけにはいかないだろう。何度も犯行を繰り返した。
このバイトを始めて3カ月ほど経った頃、警察がアパートにやってきて逮捕された。トモヤは少年鑑別所に入所した。
面会に来た両親は、激しく怒り、悲しんだ。
「してはいけないことを、あれほど教えてきたのにお前は何を聞いていたんだ!」
「そんなふうに育てた覚えはない!」
ふたりはトモヤを責め続けるのだった。
一方的に命令して、子どもの気持ちを無視
トモヤの父親は高圧的でした。「~しなさい」と命令し、「~してはいけない」と禁止する言い方が高圧的です。しかも、非常に一方的であることが問題です。トモヤの希望とは関係なく、父親の価値観にもとづいて物事が選択されていました。
「健康のために野菜を食べなさい」くらいのことは、ほとんどの人が言っていると思いますが、「運動はサッカーをやりなさい」「洋服はこれを着なさい」と指定するのは違和感がありますね。親の好みを押し付けており、子どもの気持ちを無視しています。
トモヤは当然、不満を抱いていました。しかし、「お前のためを思っているんだ」と言われると、反抗もできません。長男の自分に、いい大学に行っていい会社に入ってほしいと期待しているのだということはわかっていました。
期待されること自体は、嬉しいものです。不満を持ちながらも、親の言うことを聞く「いい子」として育ってきました。
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