共同脚本家の大石静ワールドももれなくついてきます。それは、ゆいの危険な恋の相手、加納恭二との耳当たりのいい酔いしれた会話に集約されています。すぐに明かされる恭二の正体は東大中退の学歴を持ち、パチンコで生計を立てる自称アーティストというもの。受け取り方次第でカッコ良くもカッコ悪くもあり、次第にギャグのような存在にも見えてもきますが、演じる錦戸亮の色気だけは揺るぎません。
ゆいと恭二の甘いシーンは、女優と自称アーティストによるスキャンダラスな不倫とも言えるわけですが、わざわざメロドラマ調で見せているのが痛快です。「忙しい、ゆい、きれい」や「ゆいに電話したくて、スマホ買ったんだ」「ゆいを心の中で抱きしめている」といった直球の言葉選びで遊びを持たせています。
グローバルの視聴者は早い段階で脱落?
それぞれのキャラクター設定に好みが分かれるのは仕方のないことですが、このキャラクター合戦に費やした前半戦の何よりもったいない点は、話がそう進まないことにあります。結婚5年目の夫婦が離婚を踏みとどまる理由はキャリアのため、踏み切る理由は浮気と、割とありきたりなものです。芸能人や政治家のスキャンダル報道を再現したかのようなネタは面白さに繋がってはいるものの、グローバルの視聴者は早い段階で脱落となりそうです。
余計に惜しくも思います。「選挙が終わったら、離婚しよう」と、4話以降はテンポよく物語が展開していくからです。結婚生活のもろさを表す大志とゆいの不満と葛藤、衝突はより感情的に表現されていき、コメディ路線は変わらないまま政権交代が叫ばれた衆院選を軸に選挙の裏側まで見せ、面白みが増していきます。強力な対立候補、想田豪役として登場する山本耕史の憎たらしい演技も見どころです。
また世間に対する痛烈な批判を含んだ台詞からは、メッセージ性を感じます。国会シーンで大志が「子育て支援、何ひとつ進んでない」と切り出し、「失敗を恐れるなって言いたいの。人は間違える。勢いで結婚するし、勢いで離婚するし。別れるとね、文字どおり戸籍にバツが付くんですよ、バツが。ねえ?よくないよ、あれバツ。寛容になりましょうよ」と言い放つ言葉は作品全体の方向性を象徴しています。
それゆえに後半にこうした問いかけが集中しているのが、やはり残念に思ってしまいます。韓国ドラマの場合、作品の核となる言葉を冒頭に一度詰め込み、関心を引き寄せた後、徐々に解きほぐしていく傾向が高いです。このわかりやすさから、国内だけでなくグローバルの視聴者も逃さないのです。
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