「潜水艇タイタン」悲劇の責任は誰が取るのか 遺族が会社を相手に訴訟を起こすのは困難か

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またロサンゼルスのシェリフ・エル・ダベ弁護士はウェブメディアのインサイダーに対し、「遺族がオーシャンゲートを訴えても勝てる見込みはゼロに近い」と、コメントした。「5人は極めて危険な活動に故意に参加し、重大な危険を故意に引き受けた」

報道によれば同意書には、タイタンは「実験的」な潜水艇であり「いかなる規制機関にも承認や認定を受けておらず、肉体的負傷や心的外傷、死をもたらす可能性がある」と明記されている。

オーシャンゲートと契約した保険会社がどこだか知りたいものだと、メルコリアーノは首をかしげる。「通常、保険会社は契約する前に、船舶が基準を満たしていることをABSなどに確認する」

責任追及の矛先はオーシャンゲートにとどまらないかもしれない。「タイタンを潜水地点へ運んだ母船ポーラー・プリンスの運航会社も、責任を問われるかもしれない」と、メルコリアーノは言う。

オーシャンゲートは深海探検の保険を請け負った会社を明かしていない。「おそらく損害賠償保険がさまざまな団体や個人をカバーしており、文言次第では、免責同意書が除外していないあらゆる事態に保険が下りるだろう」と、エーブラハムは言う。

オーシャンゲートの今後

PR会社10イエティーズ・デジタルの共同創業者アンディ・バーは本誌の取材に応え、「オーシャンゲートは終わりだ」と述べた。

「過去に何度も安全性の問題を指摘され、それを無視してきたことがここまで明るみに出ては、ブランドの存続は難しい。知財と資産をどこかに売却するか、ブランドを一から再構築して出直すか、道は2つに1つだが、後者はどう考えても現実的ではない」

タイタンの悲劇は深海探検業界に衝撃を与えた。「深海探検を扱う会社はわが身を振り返り、特に不祥事や事故が起きた場合の危機管理対応が時代に合っているかどうか確認しているだろう」と、バーは言う。

「深海探検はその性質上、大きなリスクを伴う。だが、ありとあらゆる手を尽くして乗員乗客の安全を守る責任は、事業に関わる企業にあることを忘れてはならない」

(執筆者:ジュリア・カーボナロ)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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