地下鉄が「空白地帯」を網羅・東京ご当地鉄道事情 わざわざ大回りしているのには理由がある

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東京メトロ千代田線は代々木上原駅を介して小田急線と直通運転をしているが、都心部では原宿や表参道を通って、霞ケ関・日比谷あたりで北に進路を変え、あとは一直線に北上。西日暮里を出ると東に進んで北千住を経て綾瀬まで。綾瀬駅からはJR常磐線各駅停車に直通する。常磐線の混雑緩和を目的とした緩急分離に伴って誕生した、“もう1つの常磐線”という側面も持つ。

東京メトロ南北線と都営三田線は、南端の白金高輪―目黒間を共有しており、東急目黒線に直通する。さらに南北線が皇居の西、三田線が皇居の東を通ることを除けばおおむね似通ったところを走る。山手線の北側に抜けるポイントは、三田線が巣鴨で南北線が駒込とお隣さん。山手線の外では三田線は板橋区、南北線は北区と分かれ、交通空白地帯を埋めている。

東京東部を走るのは都営浅草線だ。京急・京成などとの相互直通運転で、羽田空港と成田空港を結ぶというとてつもなく大きな役割を担う。通っているのは東銀座・日本橋・浅草橋・浅草など東側の繁華街。全体では西馬込―押上間で、京急線直通電車は泉岳寺―押上間を走る。西馬込―泉岳寺間は支線のような位置づけとも言えるが、南方で山手線の外に出る地下鉄は実は浅草線だけ。西馬込駅は住宅地の中の駅だが、東京の地下鉄では最南端の駅である。

副都心線は和光市―池袋―新宿三丁目―渋谷間。北は東武東上線・西武池袋線、南は東急東横線と直通運転をしつつ、渋谷・新宿・池袋という三大ターミナルを相互に結ぶ。副都心線が開業したおかげで、並行する山手線や埼京線のお客が少し減ったというくらい、なかなか大きなインパクト。2008年に開業した、いまのところ最も新しい地下鉄路線である。

東京メトロ17000系
2021年にデビューした東京メトロ17000系。副都心線・有楽町線で活躍(撮影:鼠入昌史)

鉄道空白地帯を埋めている

こうして東京の地下鉄をつぶさに見ると、実にうまく都心部の鉄道空白地帯を埋めていることがよくわかる。日比谷線がわざわざ東に迂回しているのもそうだし、東西線と新宿線の郊外における棲み分けも巧みだ。どの路線も走っていないような河田、勝ちどきといったエリアも、大江戸線がカバーする。

どこに行っても東京は大都会。その空白地を互いに補完し合いながら埋め尽くす。それが、東京の地下鉄の神髄である。どの路線がどう、というよりは、全体でひとつの役割を担っているといっていい。地下鉄ではないが、東京都交通局が運営する「日暮里・舎人ライナー」や都電荒川線も地域の足を担っている。

将来は有楽町線を豊洲から住吉まで、南北線を白金高輪から品川まで延伸する計画がある。いつ実現するかを見通すのは難しいが、少なくとも今後も東京都心の鉄道空白地帯は、地下鉄によって確実に埋め尽くされていくのだろう。

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鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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