賃上げ率と日経平均株価の「なるほど」な関係 バブル高値の3万8915円をターゲットにするには

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やはり景気の本格回復には、大企業だけでなく、中小企業まで賃上げが進む必要があることがわかります。上図からは、中小賃上げ率が全体の平均に近づくときに、赤線グラフが上昇し、これと連動して株高となっているからです。中小企業の賃上げが進めば国内の消費の裾野も広がるため、“景気の回復→株高”が本格化するわけです。

2023年は気になる数値となっています。-0.30%となり、中小賃上げ率が全体賃上げ率を大きく下回りました。単純に考えると、今年の年末の株価水準は厳しいものとなってしまいます。

大企業の賃上げが進み、遅れて中小の賃上げ率が進んだ

ただ、過去を見ると“中小賃上げ率の全体賃上げ率との差”の赤線グラフが低下しても株価は堅調に推移する場面もありました。上図の黒四角で示される2014年は中小賃上げ率の全体賃上げ率との差が-0.31%まで下がりました。一方の株価は堅調でした。当時はアベノミクスによる景気回復、好調な企業業績が期待されるなかで、先ずは大企業の賃上げが進みました。これに遅れて中小賃上げ率が進んだのです。

その結果2016年以降は赤線グラフも株価と連動した推移を取り戻しています。2023年の春闘では、中小企業の間では、業績が改善していないにもかかわらず賃金を上げる「防衛的な賃上げ」企業が少なくないと言われています。

足元の株高が長期的に続き、1989年のバブル高値の3万8915円をターゲットとするには、中小企業の業績回復→中小賃上げ率の上昇を伴う本格的な内需拡大が必要と考えられます。

吉野 貴晶 マネックス証券チーフ・マーケット・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、国内系運用会社で投資工学開発センター長を経て、現職。社会人として歩みを始めて以来、一貫してクオンツ計量分析、データサイエンス、AI(人工知能)を活用した証券市場の分析に携わる。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)にて客員教授、学術フロンティア・センター特別研究員。経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。博士(システムズ・マネジメント)。日本ファイナンス学会理事、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)理事。2025年9月より現職。

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