賃上げ率と日経平均株価の「なるほど」な関係 バブル高値の3万8915円をターゲットにするには

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賃上げ率も日経平均株価も、上図のなかにある3つの紫色の矢印に示されるように、ある程度は連動していることがわかります。2つのグラフは共に2002年までは低下してきました。その後は横ばい。そして2014年以降は賃上げ率が2%台を回復してきたとともに、株価も上昇しました。

このような賃上げ率と株価の連動の流れから2023年末の日経平均株価の想定は、歴史的な賃上げ率の上昇からさらなる株高が期待されるかもしれません。

とは言うものの、上図をより細かく見ると、2010年代半ば以降は賃上げ率と株価の動きは乖離しています。日経平均株価は将来のデフレ脱却への期待を織り込み上昇してきた一方で、賃上げ率は2%程度で抑えられてきました。

中小組合の賃上げ率と株価の関係

近年、人手不足が指摘されています。労働力が足りなければ会社側は給料を上げてでも人を雇いたいとも考えるため、賃上げが進みそうです。しかし、実際にはそこまでの賃上げが進んできませんでした。企業は非正規雇用を増やして人手不足を乗り切ったり、会社の業績が良くてもボーナスなどの一時金で社員に還元して基本の給与のベースは高くしなかったことなどが、わが国の賃上げ率が抑えられた理由になります。

ところで連合では組合員が300人未満を“中小組合”と定めて、その中小組合を対象とした賃上げ率も公表しています。実は、この中小組合の賃上げ率を使うと、より株価との関係が見られるようになります。

この図では日経平均株価と中小組合の賃上げ率(中小賃上げ率)の推移を並べています。この中小賃上げ率は、集計対象のすべての組合平均賃上げ率との差(中小組合の賃上げ率-[すべての組合の]賃上げ率)としました。通常、大企業の賃上げ率が中小企業を上回るため、“中小賃上げ率の全体賃上げ率との差”のグラフはゼロを下回る傾向になります。グラフが低下すればするほど、中小賃上げ率が全体の平均を大きく下回るものですが、日経平均株価の推移とおおむね連動を見せています。

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