千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに

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千葉銀行などの看板
長引く低金利で厳しい経営環境とはいえ、3社の連携による仕組み債の販売は顧客軽視と言わざるをえないものだった(編集部撮影)

仕組み債の販売からいち早く撤退した「優等生」が、まさかの「問題児」だった。

証券取引等監視委員会は6月9日、ちばぎん証券や親会社の千葉銀行などの3社に対し、仕組み債を顧客に十分な説明なく販売していたとして、行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令など行政処分を検討する。

ちばぎん証券と提携し顧客を紹介していた武蔵野銀行も勧告の対象になった。3社は「厳粛に受け止め、改善・再発防止に取り組む」とのコメントをそれぞれ発表した。

仕組み債はこれまでも個人投資家に販売するには適さないと指摘されてきた商品だ。デリバティブ(金融派生商品)を使うことで、高い利回りを可能にする反面、株価や為替に連動して償還条件が変動するなど商品性は複雑。通常の債券とは異なるリスクがあるうえに手数料も不透明だった。

金融庁は昨年5月に公表したリポートで、仕組み債の1つであるEB債(他社株転換可能債)を「購入する意義はほとんどない」と断じたほどだ。

販売をいち早く中止したちばぎん証券

2022年8月、金融庁は仕組み債の販売状況について実態把握に乗り出す。地方銀行系証券会社はとくに仕組み債の販売に積極的だったが、強まる逆風を前に販売を次々と取りやめた。その結果、仕組み債を取り扱う地銀の数は2022年3月末に100行中77行あったが、11月末には33行と激減した。

この流れにいち早く反応していたのが、ちばぎん証券だった。金融庁の実態調査前の6月、他社に先駆けて仕組み債の販売を中止した。

親会社の千葉銀頭取は、業界団体である全国地方銀行協会の会長。「協会長として金融庁とやりとりする中で、調査の実施を事前に知ったのでは。抜け駆けだ」(ある地銀関係者)。そんな恨み節まで漏れていた。

ところが、そのちばぎん証券で無理な販売が横行していた。監視委によると、2022年6月末に仕組み債を保有していた約8400人の顧客のうち、3割が同社の基準でも仕組み債の販売に適さない「低リスク投資」の意向を持っていた。また、顧客の多くは70代以上だったほか、投資経験がまったくなかった例もあった。

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