中国がロシアの港を奪還? 極東権益を侵食中 ウラジオストク港の使用権を165年ぶりに回復

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ウラジオストク港使用権の付与に合意した背景は何か。まず経済面。中国が吉林省や黒竜江省から貨物を輸送する場合、今は大連港まで運んで、江蘇省、浙江省向けの貨物船に積み替えている。大連までの距離は短くても300キロメートル、長ければ600キロメートルである。

ウラジオストク港開放によって最短100キロメートル、最長でも300キロメートルと輸送距離は半減され、コストパフォーマンスもいい。吉林、黒竜江省から中国南部への輸送は「国内貿易」扱いだから関税の問題も発生しない。

一方、ロシアのメリットは何か。これまでロシアはウラジオストク港を、原油、天然ガス、海産物、木材などを日本、韓国、アメリカ、台湾に輸出する窓口にしてきた。しかしウクライナ侵攻に伴う経済制裁で、西側諸国への輸出量は激減。ウラジオストク港には「閑古鳥が鳴く」状況だ。

プーチン政権を支え、要求をのませた中国

中国が対西側貿易減少の穴を埋めてくれれば、ロシアも「ニエット(ノー)」とは言えない。それがウラジオ使用権を求める中国の要求を受け入れた経済的理由だ。双方にとり「ウィンウィン」のケースだ。

では、政治的にはどうか。西側は中国がロシアのウクライナ侵攻を非難せず、ロシア軍の即時撤退を求めていないとして、「ロシア寄り姿勢」を批判。広島サミットの首脳声明でも中国にロシア軍撤退を要求するよう求めている。

2023年3月の中ロ首脳会談の共同声明は、「(中ロ)双方は、国際連合憲章の目的と原則が尊重されなければならず、国際法が尊重されなければならないと信じる」とした。ウクライナ侵攻が国連憲章に違反していること念頭にした、事実上のロシア批判だ。中国は決してロシア寄りの立場をとっているわけではない。2014年のクリミア併合を中国が認めていないのもその証左だ。

共同声明はさらに、ウクライナ危機の解決に積極的な中国の意思を歓迎し、「『ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場』(2月の声明)に示された建設的な命題を歓迎する」と、中国の仲介工作を支持した。

共同声明を読む限り、ロシアは中国の主張をそのまま受け入れたことがわかる。ウクライナ侵攻後、中ロ2国間貿易は前年比30%増となった。大半が経済制裁で西側に輸出できなくなった原油、天然ガスを中国が輸入しているからだ。ロシア経済を支えるうえで、原油を大量に輸入してくれる中国とインドの存在は死活的に重要だ。

中国は経済的利益を与えてプーチン政権を支えているだけに、ロシアは中国の要求をむげに断れない。米中対立の激化で、中ロは安全保障協力を強化することに「共通利益」を見出している。中国からすればロシアにさまざまな要求をのませる絶好のチャンスでもある。こうしてみると、中国こそウクライナ危機最大の受益者ではないか。

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