湘南モノレールは「海岸」まで延びる予定だった 終点「湘南江の島駅」の位置はどう決まったか

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湘南モノレール50年の軌跡
「祝開通」のヘッドマークを掲げて走る湘南モノレール(『湘南モノレール50年の軌跡』より)
JR東海道線・横須賀線などが乗り入れる大船駅と、湘南エリアの一大観光地である江の島への入り口、湘南江の島駅の間約6.6kmを結ぶ湘南モノレール。世界的にも珍しい「懸垂式」を採用し、アップダウンやトンネル、カーブのある路線を走るモノレールは「まるでジェットコースター」のような乗り心地を楽しめることも魅力の1つになっています。
旅行・鉄道ジャーナリスト森川天喜氏の著作『湘南モノレール50年の軌跡』(神奈川新聞社)は、2021年に全通50周年を迎えた同線の歴史や関係者インタビューなどを収録した一冊です。同書から、開業時のエピソードの一部を抜粋して紹介します。

1970年3月7日、湘南モノレール江の島線は、大船駅―西鎌倉駅間(4.7km)で部分開業を果たした。その前日の3月6日には11時から大船駅ホームで、中村梅吉モノレール協会会長、山本正一鎌倉市長、足立一郎湘南モノレール社長、および報道陣など約100名が出席し、横浜市消防局のブラスバンドのマーチを伴奏に、花電車の前でくす玉を割るなど「発車式」が執り行われた。続いて、正午から深沢の車庫横の広場に会場を移し、約1500人の関係者を招待して盛大な「開通記念式」も行われた。

ちなみに、この日は、「皇后誕生日」で「大安」と非常に縁起が良く、また、約15m/sの強風が吹いたにも関わらず、その影響をまったく感じることなく試運転車両が運行され、式典出席者からは「都市交通機関のニューフェースとして門出を飾る開通式が行われるには、まことにふさわしい日」との声が聞かれた。

国鉄からやや離れた大船駅

一方で、モノレール大船駅は、国鉄大船駅から位置的にやや離れており、乗り換えにはいったん駅外に出て商店街の中を歩かなければならず、「不便だ」との声も聞かれた。国鉄駅から、やや離れた場所に駅が設置された経緯については、『設営の記録』(編注:『湘南モノレール 設営の記録』=湘南モノレール建設本部長の手記)に次のように記述されている。

『当社路線建設は、起点を京浜道路国鉄大船駅前起点上に予定していた。ところがその地点は、極めて狭隘のため(中略)最初の予定よりもかなり後退して、駅を設置することになったのである(中略)最初はその道路(注:京急道路)上に当社駅乗降口を設置するつもりでいたところ、同社(注:京浜急行)自動車部担当者の強い反対のため、国鉄大船駅との連絡口が未解決であった当時として、止むを得ず外郭だけ建っていた三階建の小ビルを(中略)借用し、建物の内外装は当社の手でこれをなし、一九七〇年三月初めから当社乗降口として使用することにした。』

なお、開業時の運転ダイヤ等は、下記の通りである。

■運転ダイヤ
 始発 大船:5時55分、西鎌倉:6時8分
 終発 大船:23時、西鎌倉:23時12分
 朝夕のラッシュ時は7.5分間隔、そのほかは15分間隔。休日は終日15分間隔。
■速度・所要時間
 最高速度75km/h、平均速度41km/h、大船―西鎌倉間所要約8.5分。
■運賃
 大船―町屋:40円、大船―深沢:50円、大船―西鎌倉:70円。
■車両・輸送量
 300形2両固定編成×5編成(開業時4編成、直後に1編成増備)。1編成あたりの乗車人員は、座席定員96人、定員208人。7.5分間隔運転の場合、1時間あたりの最大輸送人員は、約2600人(満員時324人×8本)。
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