「中年男性が大喧嘩」ネトフリ恋愛番組の奥深さ 「あいの里」が描く大人の恋愛にハマる人続出

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40〜50代とは、人生の半ばを過ぎて、誰にでも平等に訪れる“人生の終わり”が視界の片隅に入るころ。いま仕事に邁進する日々に充足感を得ていても、それが残りの人生でずっと続くわけではないことをふとした瞬間に考える。

そのときに、自分の人生は仕事のためにあるのか。定年を迎えたあとは家族のために生きるのか。独り身であれば、その先の20〜30年という時間を何をよりどころにどう生きるのか。人生の紆余曲折を経た出演者たちには、ともに生きるパートナーの存在が何よりも大事だとの考えが根底にあり、それは彼らにとって生きることそのものにつながっているようだ。

高齢化が進む海外へも売れるフォーマット

本番組を揶揄しながら見ていた同年代も、恋愛がどうこうよりも、彼らの真剣な姿に、ふと人間としての生き方や人生の意味を考えるに違いない。出演者たちが恋愛に向き合う切実であり誠実な姿や振る舞いに、悲哀や悲壮感はない。

MCのベッキーは、ある男性をこき下ろしていたかと思えば、いつの間にか彼の恋愛を応援していることがあった。それは見ている人たちも同様のようだ。くだらないと思っていたのに、気づけば彼らのどこかに共感し、感情移入してしまう。

そんな番組だから話題になるのだろう。恋愛リアリティーショーとしては、従来のフォーマットそのままの番組だが、視聴者の心の捉え方はこれまでと大きく異なり、特異な番組になっている。

すでに世界的に人気を得ている恋愛リアリティー番組だが、本番組は高齢化が進む中国や韓国などでも支持を得そうだ。また、これをベースにしたスピンオフ企画もいろいろ考えられるだろう。世界的に売れるフォーマットになっていくポテンシャルがある。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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