マツダ「ラージ商品群」投入で負けられない理由 最重要市場アメリカで問われるブランドの実力

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

今年に入ってからマツダの株価は約3割上昇している。日経平均(約25%)やTOPIX(東証株価指数)(約2割)の上昇率を上回っている。株式市場はマツダの先行きをポジティブに見ていることになる。

もっとも、PBR(株価純資産倍率)はなお0.55倍(6月7日時点)と解散価値を大幅に下回っている。このPBRは国内乗用車メーカー7社で下から2番目。ちなみに7社のうちPBR1倍を超えているのはスズキだけだ。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、「(日本メーカーの)PBRが低いのは、EV関連で期待されていないからではないか」と分析する。

初のEV「MX-30 EV」を2021年にアメリカで発売したが、販売台数は累計でも1000台に満たない。写真の車両は国内仕様(写真:マツダ)

マツダは昨年11月に「2030経営方針」を発表し、2030年のグローバル販売に占めるEVの割合を25~40%とする目標を打ち出した。

2030年までを3つのフェーズに分けて電動化を進めていくシナリオを描く。第1フェーズではEVの技術を開発し、グローバルにEVを導入開始するのは2025年以降の第2フェーズ、本格展開となると2028年以降のフェーズ3からだ。

北米でのEV生産計画を打ち出せず

だが、最重要市場のアメリカはEVシフトが加速している。カリフォルニア州など一部の州では2026年から新車販売の一定割合以上をEVなどの環境対応車とする規制がスタートする。これらの州では2035年に環境対応車100%、ハイブリッド車(HV)を含むエンジン車の販売が禁止となる。

また、昨年インフレ抑制法(IRA)が成立。EVの購入支援策、最大7500ドルの税額控除を受けるために、北米で最終組み立てされた車両であることを前提に、搭載する電池の材料や部品にも厳しい条件を課した。

7500ドルの差は販売現場では死活問題のため、多くのメーカーが北米でのEV生産や要件を満たした電池調達契約を結ぶなど対応を進めている。一方、マツダは北米生産について具体的な対応を打ち出せていない。

マツダ幹部は「最初にゴールテープを切る必要はない」と冷静だが、100万台強というスモールメーカーで余裕がないため、大規模投資には慎重にならざるを得ないのが現実だ。

6月27日の株主総会後に社長に就任予定の毛籠専務(左)、ラージ商品群の成功とEV化の道筋を付けることが求められる(写真:マツダ)

結局、今できることはEVの開発をしっかり進めること。その開発原資を稼ぎ出すラージ商品群を成功させることに尽きる。「重要な1年」には、この先のEV戦略の成否もかかっているのだ。

6月27日に開催される株主総会後に、現任の丸本明社長から毛籠専務にバトンが渡る。アメリカの販売改革を主導してきた毛籠新社長には、ラージ商品群を成功に導くとともにEV化の道筋をつけることが求められる。

村松 魁理 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

むらまつ かいり / Kairi Muramatsu

自動車業界、工作機械・ロボット業界を担当。大学では金融工学を学ぶ。趣味は読書とランニング。パンクロックとバスケットボールが好き。東京都出身。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事