コロナで中止、元高校球児が挑む「あの夏の再現」 アントレプレナーシップ学部で育つ学生を取材
現在、文科省は同教育支援のターム3「スタートアップ・エコシステム形成支援」を展開している。自治体や産業界と連携し、大学などで実践的な教育を行うことで、成長性のある大学発ベンチャーの創出を強化していく。
同プログラムでは東北大学や東京大学、名古屋大学、早稲田大学などの国公立・私大と提携し、授業やセミナー、シンポジウム、ワークショップを行うほか、ピッチやビジネスコンテストを支援する。しかし、これらは単一的なプログラムにとどまっており、専従とまでは至っていない。
日本初の「起業家学部」が誕生
そんななか、専従の学部を創設したのが武蔵野大学(江東区)だ。2019年4月、西本照真学長は「自ら思考し行動し、社会を切り開いていくための学びを実践する場」を構想した。集まったのは現役実業家やベンチャーキャピタリスト、マーケターなど、社会の第一線で活躍する講師。学部長にはビジネス第一線で活動する伊藤羊一氏が就任した。
伊藤氏は、「日本にとって1995年は分岐の年で、以降GDPが成長しなくなった。1995年はWindows95発売の年、すなわちインターネット元年である。インターネット革命後、一気に社会は変化。この変化を、アントレプレナーシップをもって突き進んでいったかどうかが、国力の差異に繋がっている。日本がこれから国際市場で生き残るためには、変化をチャンスと捉え、スピード感を持ち、失敗を恐れずに決断し価値を生み出すことができる人材を育成することが急務」と話す。
カリキュラムは具体的にどのようなものか。伊藤氏は「他大学を参考にせず、組成している」と話す。実践中心で、マインド・事業推進・実践の3つを柱に置く。各授業でインプットの時間は多くても10%。残りは90%がアウトプットを意識した授業構成だ。
スキル面では、MBAで学ぶ内容を大学向けにアレンジ。例えば「クリティカルシンキング」の授業。従来社会人向けに展開されていたものを本学では、大学生向けにわかりやすく噛み砕いて授業に落とし込んでいる。
同時に、マインドを鍛えることも重視。自分自身が何者なのか。どんなことをやりたくて、どう人生を歩んでいくのか。これらを突き詰めて考え、対話し続ける。「これらは教えられて身につくものではなく、日頃の内省と対話によって育まれる。突き詰めて考え、対話を続けていくことで思考も、精神も磨かれていきます」(伊藤氏)。
そのため、1年次は学部生全員が寮生活をし、寝食を共にする。伊藤氏も一緒に住みながら日々を過ごす。
「みんなで夜通し対話と議論し、コミュニケーションをとる。人と話すことが何よりも刺激になる。そして考え、アウトプットする。ひいては行動になり、結果となり、再び考える。いわゆるPDCAのサイクルです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら