コロナで中止、元高校球児が挑む「あの夏の再現」 アントレプレナーシップ学部で育つ学生を取材

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カリキュラムでは学生たちが成長していく過程を包括的にサポートする。実践カリキュラムは、ワークショップやインターンシップ、起業ピッチなどで、最終的には実際に授業の中で起業をしていく。大学というよりはビジネススクールや企業の講座や研修に近い内容だ。

なお、アントレプレナーシップ学部には卒論がない。その代わりに3年次・4年次に全員が起業を経験するという課題を設けている。実際にスモールビジネスからスタートし、実務を起業家やベンチャーキャピタリスト、法律専門家、テクノロジーマーケティングコミュニケーション専門家、教育研究の専門家という布陣でサポートする。

現在3年生の大武優斗さんは発起人として、自主プロジェクト「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会2020-2023~」に挑戦中だ。彼はコロナ禍で夏の甲子園が中止となった年代の高校球児。資金や応援者を集めて、2023年11月29日に甲子園球場で「あの夏を取り戻せプロジェクト」を開催する予定だ。

2年生の板本大輝さんは、2022年4月に株式会社Emerを立ち上げた。ライブ配信をしたいけれど、機材や技術が足りないスポーツチームに対して配信機材を送り、遠隔で配信をサポートするビジネスを営む。スポーツを通して「挑戦と応援が連鎖する社会」を創ることを目指し、スポーツチームの新たなキャッシュポイントを作るべく、フットサルチームの新たなライブ配信の形に挑戦している。

2年生の板本さんは学部が開催したピッチで、自身の事業をオーディエンスに向かってプレゼンテーションする(写真:武蔵野大学提供)

3年生の西野うららさんは、現在プロジェクトを構想している最中だ。きっかけは「葬儀に参列した際に、業界のタブー視されている空気感に疑問を感じたこと」と話す。「私が死んだ後も何か文化や伝統として続いていく、新しいプロダクトを生み出したいと考えているけれど、具体的にはどんなものがいいのかこれから考えていきたい」と語った。

クラファンや資金調達にも挑戦

学生たちは各々クラウドファンディングや、ベンチャーキャピタルなどを活用し、資金調達にも挑戦している。

「事業を卒業後も継続するかどうかは学生次第。まずは何かしら事業を始めることを本学でチャレンジしてもらっている」と伊藤氏は話す。

学生はどんな点に興味を持って本学に入学したのだろうか。話を聞いた学生たちは「大学に進学することにあまり興味がなかった」と口々に話していたのが、少し意外だ。既存の高校教育や大学教育に不満を持っていたり、社会に出た際に学んだことが役立つのかという疑問を感じていたりすることも影響しているようだ。

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