「DXにSDGs」経営陣が流行のテーマを追う愚策 「現場の努力」に賭けるより良い立地の見極めを

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電機は、家電製品が1960年前後に需給ともに立ち上がり、それと同時に発送電設備や工場設備も伸びていった。

そこから先の展開は自動車と似ているが、分析対象期間の入口付近から本格化した半導体の波及効果で、計算機や通信機や娯楽機の製品市場が次から次へと立ち上がったところに独自の特徴がある。

精密機器も、流れとしては電機と同一視してよい。

化学は、1960年前後に石油化学工業が本格的に立ち上がった。そして自動車や電機から派生する需要に応えるべく、陸続と新たな機能製品の市場が立ち上がっている。

半導体ほど目立たないが、触媒の進化が成長を下支えする点も含めて、成長の進度は自動車より電機に近い。

企業成長は外生的な現象である

何はともあれ、まずは企業成長が外生的な現象であることを認識すべきである。

市場が立ち上がって急成長を遂げるには供給と需要が出揃わなければならないが、供給を刺激する技術革新はパブリックドメインで起きるもので、個別企業が囲い込めるものではない。

需要を刺激する社会制度や所得水準や価値体系の変化にしても、個別企業の意向とは無関係に起こるものである。

それなのに企業成長を内生現象と錯覚すると、カネやヒトといった経営資源を浪費する結果につながりかねない。

事業立地の陣取りを変えることなく需要喚起策を繰り出したり、社員を叱咤激励するのは、B-29に竹槍で立ち向かうようなものである。

流行りに流されて自社の戦略課題を見失うな

経営者は景気動向に敏感である。外生要因の重要性は熟知していると思われるが、それでも幻惑に踊らされることが少なくない。

現下で言うならメディアはDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)一色で、その前は働き方改革やリモートワーク、ESGやSDGsの大合唱であった。

社員が敏感に反応する「流行」を無視するには胆力が要るものの、汎用性の高いテーマに特定事業の戦略がないことは火を見るよりも明らかである。

前回紹介した成長の標準モデルをつねに念頭に置いて、自社の戦略課題を見失わないようにしていただきたい。

三品 和広 神戸大学大学院教授

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みしな かずひろ / Kazuhiro Mishina

1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て現職。著書多数。経営幹部候補生のために、日本企業のケース464事例を収録した『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)が2022年5月に完成した。近著に『実戦のための経営戦略論』

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