「DXにSDGs」経営陣が流行のテーマを追う愚策 「現場の努力」に賭けるより良い立地の見極めを

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母集団構成比8.8%の電気機器も採択ケースでは26.4%に跳ね上がり、採択率は14.6%に上る。

採択ケースの構成比が14.5%に達する化学工業や、採択率が16.7%に上る精密機械も成長業種と言ってよかろう。

逆に採択ケースが1つもない停滞業種もある。母集団の大きさの降順に列挙すると、サービス、通信、繊維、鉄鋼、倉庫、非鉄金属、紙、石油・石炭、鉱業、水産の10業種が該当する。

サービスと通信は採択基準を満たす古参企業が少ないため仕方ない面もあるが、それ以外は正真正銘の停滞業種と見なすほかはない。

業種間で成長率の明暗が分かれる理由

業種間で明暗が決定的に分かれるのは、成長率を基準にしたことに固有の特徴である。戦略のアウトプットをシリーズ第1巻では利益率、シリーズ第3巻では占有率で計ったが、優良ケースが特定業界に偏在する傾向は見られなかった。

ただし、繊維以下の停滞業種に高収益企業が見当たらないのもまた事実である。

製品やサービスの普及率が0%から90%あたりまで上昇する0─90フェーズで成長率が高くなるのは、自明の理と言ってよい。

逆に普及率が100%に近づいて上昇の余地がなくなれば、成長率は目に見えて落ちるしかない。

0─90フェーズが分析対象期間と重なった業種が本巻では幅を利かせ、入口までに終わった業種は影が薄くなっている。

自動車は、国産乗用車の供給が1960年前後にスタートし、「マイカー元年」と命名された1966年に国内需要が本格的に立ち上がった。

これは本巻の分析対象期間の入口とほぼ一致する。

世帯数に対する普及率は1970年代の終盤に100%ラインを突破したが、1990年代の半ばに160%を超えるに至り、そこから分析対象期間の出口までフラットに推移している。

1970年代の終盤以降はアメリカで日本車の浸透率を、1990年以降はアジア諸国で自動車の普及率を0%近傍から引き上げる挑戦に乗り出しており、海外進攻で成長を紡いでいる。

高級化に伴う単価の上昇が金額ベースの成長率に寄与した点も見逃せない。

次ページ電機、精密機器、化学分野の立ち上がり
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