YouTube、スキップNGの「30秒広告」に見える未来 「古臭いやり方」が一周回って有効に?

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YouTube Selectは70%以上がテレビ視聴とされているが、当該広告の再導入に際しては、過去の経験を踏まえてか、テレビでの視聴を中心とした仕様になっている。

また、前回廃止された2018年とはYouTubeが置かれている環境も異なっている。1つは、2018年11月より、「YouTube Premium」という広告非表示の再生が可能になる有料プランを導入しているという点だ。「広告がうざい」と思う視聴者は、有料プランに移行することができる。

もう1つは、長尺の動画が増えているという点である。具体的なデータは得られていないが、長尺の企画動画が増加しているといわれている。実際、筆者自身も、最近は10分を超える動画を頻繁に視聴するようになっている。

テレビ番組を視聴している感覚からいえば、視聴者は30秒の動画広告をさほど長いとは感じないだろう。

似て非なる、動画広告とテレビCM

同じ30秒の広告といっても、YouTubeの動画広告とテレビCMの作りは似て非なるものだ。YouTubeのスキップ可能なインストリーム広告においては、「いかに広告をスキップされないか(飛ばされないか)?」を工夫する必要がある。

30秒広告の導入を発表するYouTubeのオフィシャルブログ(写真:編集部撮影)

テレビCMは録画視聴の場合はスキップできるが、リアルタイム視聴においては、CMタイム中に視聴者にスマホをいじられたり、トイレに行かれたりする可能性はあっても、広告が丸々スキップされることはない。

「スキップされない30秒広告」が始まれば、広告主、つまり広告を出す企業・団体にしてみれば、テレビCMと同じ素材を流用しやくなるし、スキップされずに確実に視聴してもらえるというメリットがある。

つまり、広告主にとっては、広告制作、広告出稿が効率的に行いやすくなるのだ。YouTube側にとっても、広告獲得によりつなげやすくなるだろう。

これまで、インターネット広告は、ユーザーデータを駆使して、「最適化」を行うことを重視してきた。

インターネット事業者や有識者の中には、広告の最適化が究極まで進むと、消費者が真に求める情報を送り届けることが可能になり、「強制接触」を前提とした既存の広告は死滅する――とまではいかなくとも、大幅に縮小していくと主張する人も少なくなかった。

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