一流アーティストがアニソンに「全集中」する事情 世界人気の日本曲トップ10は「アニソン」が席巻

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近年は作品と音楽の密接度が増しているのが特徴だ。『チェンソーマン』はその代表例だろう。

そもそも、米津玄師はオファーの前から楽曲を構想していたほど作品のファンだった。「幸せになりたい 楽して生きていきたい」など、貧乏生活を送る『チェンソーマン』の主人公・デンジの欲望を表現した歌詞。その曲調はかつてのボーカロイドプロデューサー時代を思わせるものである。

さらに編曲にはKing Gnuの常田大希が共同参加し、ミュージックビデオにも出演する。作品人気に加えて、アーティストの人気、作品を深く理解した楽曲など、いくつもの掛け算で強力なヒットが生まれたといえる。

それだけではない。『チェンソーマン』は全12回のエンディングソングに毎週異なるアーティスト・楽曲を起用した。Vaundy、ずっと真夜中でいいのに。をはじめ、アニメ好きの人気アーティストが集う力の入れようだった。

大手レコード会社社員はアニメタイアップについて「ドラマより安定して結果が出る印象がある。作品との寄り添い方が深く、製作陣の音楽に対する要望も強い。アニメファンが喜ぶか否かは大きく、作品をわかっていると思ってもらえると爆発力につながる」と語る。

世界に届く「チャネル」

各アーティストが全精力を注ぐ背景には、アニメ製作陣のこだわりはもちろん、コンテンツとしての裾野が広がったことがある。

アニメは以前、地上波放送が中心だったが、00年代はDVDなどのパッケージ販売が盛り上がり制作本数は増加していく。10年代はネット配信が広がり、多様な作品を楽しめる環境も整った。現在、新作アニメは海外でもほぼ同時に配信されている。

こうした環境下で育ってきたのが現代のアーティストだ。アニメ好きを公言するアーティストも増え、アニメと音楽との垣根は限りなく低いものになりつつある。

アニメには熱心なファンを獲得できるメリットもある。冒頭の『残響散歌』は複合チャートであるビルボードのダウンロード指標でも年間1位だった。ダウンロードはCDのように1回買い切りのため、通常は長く上位にとどまることが難しい。だが、アニメヒットではそうした動きが見られるわけだ。

「アニメやアイドルのファンはCDやデジタルデータを購入して所有したい、アーティストに貢献したいという傾向が比較的強い」(ビルボード事業本部上席部長の礒﨑誠二氏)

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