又吉直樹「立派な大人だという自信は全くない」 レストランでまさかの入店拒否されたことも…
この春10年ぶりのエッセイ集『月と散文』を上梓した芸人・作家の又吉直樹さん。コロナ禍のなかで書き溜めた文章に加筆・修正、さらに書き下ろしも加えた一冊です。新作への思いと共に又吉さんが思うカッコいい人についても聞いてみました。
40代を迎えた又吉さんの眼に映る日々
桜の花弁がヒラヒラと舞う中、真っ白なスカジャンでふらりと現れた又吉直樹さん。この春10年ぶりにエッセイ集『月と散文』を上梓しました。累計16万部超のベストセラーとなった前作のエッセイ集『東京百景』から10年……この間に小説『火花』が芥川賞を受賞。「ピース」の相方である綾部祐二さんは渡米し、又吉さんをとりまく環境は大きく変わりました。
そんななか、コロナ禍にあったこの3年間に書き溜めた150篇を超える文章や自由律俳句の中から選び、加筆・修正したものに、10話を超える書き下ろし原稿を加え、全66話をまとめた『月と散文』は、まさに“又吉直樹の今”が収録された一冊となりました。コロナ禍で多くの芸人が舞台に立つ機会を失っていた際、又吉さんが考えていたこととは? 青春時代を描いた『東京百景』と異なり、40代を迎えた又吉さんの眼に映る日々とは?
—— 『月と散文』に収められた文章は、又吉さんのオフィシャルコミュニティ「月と散文」で発表されたものがベースとなっているのですね。
又吉直樹さん(以下、又吉):ぼくは毎月、渋谷で「実験の夜」というライブを行っていたんですが、コロナ禍で無観客になったり、ステージ上でもマスクをしなくてはならなかったりとなかなかしんどい状況が続いていました。ちょうど100回を迎えたこともあり、このライブを終了させようとなった時に、代わりに何か発信できる場所をつくろうと考えたのが、オフィシャルコミュニティ「月と散文」です。なので、当初はお笑いライブを書くことで表現するようなつもりもありました。