又吉直樹「立派な大人だという自信は全くない」 レストランでまさかの入店拒否されたことも…

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—— 週に3回文章をアップされていたそうですが、ネタ探しにご苦労されたのでは?

又吉:当時はどこかへ出かけることもままならないような状況で、芸人仲間もトークのネタがないと困っていましたね。でも、ぼくは何もないなら「何もない」と書けばいいかな、と(笑)。もともと歩くのが好きでよく散歩しているんですが、自粛期間中は不要不急の外出を避けるということでしたので、夜、毎日1~2時間は歩いていました。最長で14キロ、多摩川を超えて神奈川まで行ったこともあります。 

—— その夜の散歩でお供にしていたのが今回のエッセイ集のタイトルにもある“月”なのでしょうか。

又吉:まあ……そうとも言えるでしょうね。月は今までもずっと見てきました。ひとくくりに月と言っても、大きさも色も形も毎日違いますよね。昨日はあそこにあったのに、今夜はここに出ているのか、今日は見えないな、とか。その少しずつ変化している様を眺めるのが好きなんでしょうね。 

(写真/内田裕介(Ucci))

威張ってる奴ってカッコ悪いじゃないですか

—— 『月と散文』は「満月」という章と「二日月(ふつかづき)」という章に分けられていますが、これはどういう分け方なのでしょうか? そもそも、三日月は馴染み深いですが、二日月という言葉を初めて知りました。

又吉:厳密に分けているわけではないんですが、満月が子供の頃からコロナ以前までのこと、二日月はこの2~3年のコロナ禍での生活を書いたものが多いですかね。

—— 今作はカバーの絵も大変印象的です。松本大洋さんにより少年の横顔が大きく描かれているのですが、カバー紙を外すと又吉さんのお顔になっているんですね。少年から大人になった又吉さんを表現されているのかと思いました。

又吉:ぼく自身、自分は大人であるとか、自立した人間であるということを見せようとは思っていません。大人としての自覚はあるけど、どこからどう見ても立派な大人だという自信はまったくありません。

—— 周囲にカッコいいなと憧れる大人の方はいらっしゃいますか?

又吉:カッコいいなと思うのは好きなことを追究している人、表現している人でしょうか。例えば「真心ブラザース」のYO-KINGさん、元「THE BOOM」の宮沢和史さん、奥田民夫さんなど、自分のスタイルをもっていらっしゃる方はカッコいいなと感じます。そもそも、ぼくにとって一番カッコいいのは“威張らずに尊敬される人”。一番ダサいのは‟威張っていて尊敬もされていない人。まだマシなのは“威張ってなくて尊敬されてない人”、その下に“威張っていて尊敬される人”の順です。威張ってる奴ってカッコ悪いじゃないですか。 

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