【5大商社決算】資源バブルの先に見えた重大課題 初の利益「1兆円超え」も株価はバフェット頼み

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株主還元については、各社とも減益見通しにもかかわらず増配や配当維持の方針を打ち出している。自己株買いにも積極的だ。丸紅が5月8日に上限300億円、翌日には住友商事も200億円の追加自己株買いを打ち出した。その直後には三菱商事が3000億円に上る巨額の追加取得を発表した。

一方、総合商社が成長戦略を示すのは難しい局面にある。地政学リスクが高まるのと同時に、資源ビジネスも脱炭素化の流れで転換を迫られている。インフレが進行する海外では、大型のインフラ投資で投資のリターンを得るのは難しくなっている。

こうした中、各社首脳は決算発表の場で成長の道筋をどう示したのか。

三井物産の堀健一社長は、「当社の強みをグローバル産業で横断的に融合することで、複雑化する社会課題にベストな現実解を提供する。コア事業と周辺事業を組み合わせ、産業横断的な事業群を形成していく」と語った。

「産業横断的な事業群を形成していく」と話した三井物産の堀健一社長(中央、写真:記者撮影)

三井物産は2026年3月期までの新中期経営計画を発表。例えばモビリティ事業では世界で事業群を3倍に拡大し、天然ガスなどのエネルギー関連で1兆円、食や健康関連で3500億円の資本を投下するとした。

資源価格や為替などの前提条件を2026年3月期の前提に調整した純利益ベースで、7500億円から9200億円まで引き上げる計画だ。

業績好調でも株価は割安水準

一方、同様に資源価格や為替の前提を調整した数字で見た場合、三菱商事は2023年3月期の純利益を7300億円とし、資源市況下落の中でも、今期は同水準の純利益を確保するとした。中計最終年度の2025年3月期は8000億円とする。

「稼ぐ力がきちんとついている」と語る、三菱商事の中西勝也社長(写真:三菱商事)

三菱商事は現中期経営計画で2024年度までに全体で3兆円、うち再生可能エネルギーなどEX(エネルギートランスフォーメーション)関連事業に1.2兆円を投じる。再エネについては、「先見性を持って投資することで、市場成熟期の高収益を実現する」とした。

中西勝也社長は、「資源高や円安(による効果)だけでなく、稼ぐ力がきちんとついている手応えを感じている」と力を込める。

伊藤忠商事は得意の「川下」を深耕し、消費や電力など生活に密接に結びついたデジタルデータを活用するなどして、新規のビジネスを創出。2023年3月期の7875億円から2024年3月期は8000億円に引き上げる計画だ(純利益から一過性損益を除いた基礎収益ベース)。

ただ、こうした説明からはまだ投資した事業の具体的な収益化の道筋を読み取るのは難しく、総合商社のコングロマリットディスカウント(複合企業の企業評価が割安になること)がつきまとう。いまだに三菱商事と住友商事の「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」(解散価値を株価が下回る状態、5月9日時点)が続いているのは、その証左ともいえる。

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