「IT大国」台湾の電気バスはどれほど進んでいるか 「自国開発・海外生産」で世界販売拡大目指す

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これらの充電設備や管理システム開発の土台には、IT大国、台湾が培ってきたサプライヤーの存在がある。エンジンの性能が重要視され、部品数も多いディーゼルバスと異なり、EVバスはEICシステムと呼ばれる電源管理、電子制御、モーター設備とその整合性が重要となる。

EV充電設備
博覧会では充電設備の展示も目立った(筆者撮影)

これらは長年パソコンの下請けや開発を担ってきた台湾が強みを発揮できる分野であり、充電ステーションや運転補助設備など各社が手を組み、「MIT(メイドイン台湾)」として国内のみならず海外での商機も狙う。

実際に、今回の博覧会にはデジタルミラーや盲点撮影機(死角となる部分を監視するサイド・バックカメラ)といった各モジュールやシステムインテグレーションを手がける業者も多く出展していた。バスの操作盤のデジタル化を手がけ、成運に納入している会社の担当者は「中国製のシステムをいっさい採用しておらず、各国の基準をクリアしやすい。また柔軟な対応ができるのが強み」としたうえで、東南アジアや日本からの問い合わせが増えていると語った。

自動運転EVバスも量産へ

官民共同での研究も進んでいる。経済部が主導し、自動車部品サプライヤー各社と国立研究所が電動自動車開発に取り組む台湾車両研発連(mTARC)は小型の無人EVバスの量産型モデルを公開。自動運転の指標であるSAEレベルは6段階(0~5)のうち、一定条件下ですべての運転操作をシステムが行う「レベル4」に達し、激しいアップダウンのある環境下での制御や小動物などの障害物を回避する性能を持つ。バッテリーも台湾製を採用し、1回の充電で70㎞の走行が可能という。

台湾製 小型自動運転EVバス
mTARCが発表した自動運転の小型EVバス(筆者撮影)

台湾のEVバス関連各社は、バッテリー関連技術の自国開発と東南アジアの各企業との協業を通じたコストを下げた供給体制の実現を目指すことで、中国製に対抗する構えだ。

mTARCのメンバーでもある有量科技は2022年9月、タイで同国の再生エネルギー大手、エナジーアブソリュート(EA)社との協業による、4GWhの生産能力を持つバッテリー生産ラインの建設を発表。バッテリーモジュール開発からEVバス事業に進出し、東南アジア4カ国に支社を構える創奕(tron-e)も、タイの大学機関向けに3両の小型EVバスを輸出、本格展開へ弾みをつけている。

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