英国王の戴冠式、ロンドン地下鉄の「粋なお祝い」 80年前の旧型電車で「1953年」にタイムスリップ
1938形は、地下深くを通る狭いトンネルの路線用として初めて、すべての電気機器を床下に設置した電車だ。それまでの車両はスペースの狭さから機器類を車内に搭載していたため、ロンドン地下鉄の歴史に残る車両といえる。
今回のイベントを行ったロンドン交通博物館(LTM)は、「当時の最新技術と1930年代後半の典型的なスタイルが融合」「緑と赤のモケットシート、グラブハンドル、アールデコの特徴的な照明器具を備えている」とこの車両を紹介。かなり傷んでいた車体の外板を修復したほか、シートは全て張り替え、客室内の電灯はアールデコ調のランプシェードを残しながらもLED電球に付け替えた。ただ、足回りの吊りかけモーターは現役当時と同じで、乗り心地は「昔のまま」の気分を味わえる。
LTMはロンドンの観光地として知られるコベント・ガーデン(Covent Garden)の一角に本館を構えるが、実はロンドン西郊外、アクトン・タウン(Acton Town)の車庫に併設する形で別館がある。ここには古い実物車両とともに、各駅にあった看板や機械類、古いポスターの原画などが保管されている。
今回使われた1938形も普段は別館で保管されているが、そもそも別館の開放日は年に数回しかなく、さらにその保存車両が走ることなど滅多にないとあって、チケットは発売後数日で売り切れた。
「古い電車」を楽しむ人々
記念走行イベントは戴冠式に先立つ4月29日から5月1日までの3日間行われ、博物館別館の最寄り駅アクトン・タウンから、ピカデリー線の北西方向の終点アックスブリッジ(Uxbridge)間を各日4往復(途中乗降不可)した。
記念運転当日、アクトン・タウン駅には発車の1時間以上前から”愛好家”が集まり始めた。乗車時間は1時間程度だがチケットは28.5ポンド(5000円弱)と比較的高額なせいもあってか、乗車する人々の年齢は比較的高め。運転予定を聞きつけたアジア系の若者が数人動画を撮りに来ていたものの、鉄道ファンというよりも純粋に「古い電車に乗ろう」とやってきた夫婦などの姿も多かった。
運行初日は、今年に入って最も気温が高い快晴に恵まれた。ある「撮り鉄」さんは、「日光が強すぎて影が出る」とぶつぶつ文句を言っていたが、雨降りよりはずっといいだろう。
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