国鉄時代、北海道を駆け抜けた「急行列車」の記憶 鉄道ファンが熱狂した「ニセコ」「大雪」の勇姿
小樽を11時00分に発車。行く手にはオタモイ峠への急勾配が待ち構えている。DD51形の重連はエンジン音もけたたましく勾配を駆け上がる。車窓右にはオタモイ海岸の景観が望まれ、塩谷を通過して「山線」最初の停車駅である余市駅に到着する。余市にはウィスキー蒸留所があり見学も可能だ。余市を発車すると稲穂峠、倶知安峠の山越えに入る。SL時代には多くのファンが集まった然別、銀山を通過すると小沢に到着する。かつては岩内線の接続駅として賑わった駅である。映画「男はつらいよ・望郷編」では小樽―小沢間と小沢駅で、蒸気機関車と共に寅さんが登場するシーンが撮影された。
エンジン音を轟かせ難所に挑む
しばしの休息後、DD51形重連はエンジンを吹かし稲穂峠にアタックする。カーブと勾配が続き、峠のトンネルを越えると車窓に名峰の羊蹄山が見えて倶知安到着である。倶知安はかつて山線の蒸気機関車が集結し、9600形やD51形が駐留していた。ここで乗務員が交代し、次の停車駅ニセコを目指す。途中にはニセコ連山、羊蹄山が車窓風景を和ませてくれる。
ニセコを発車すると、列車はいよいよ山線最大の難所「上目名越え」に挑む。SL牽引時は多くのファンが重連の力闘をカメラに収めたが、DD51形重連もフルスロットルでエンジン音を山峡に轟かせて勾配を進む。黒松内、蕨岱を過ぎると海岸線に近い長万部に向かって、今度は勾配を駆け下りていく。
長万部から先は単機牽引となり、前補機の切り離し作業が始まる。その間に名物駅弁「かにめし」を購入、遅い昼食としよう。身軽になった「ニセコ」は長万部から噴火湾沿いを走り、函館に到達する。
C58形が牽引した「大雪くずれ」
北海道の名門急行「大雪」は道央と道東を石北本線経由で結ぶ列車で、ほとんどは気動車による昼行列車だったが、「大雪5号」1往復は夜行客車列車として札幌―北見(網走)間で運転されていた。
その編成は郵便・荷物合造車のスユニ61形、3号車は車体中央の扉を挟んでA寝台とB寝台に分かれたオロハネ10形。その他にB寝台はスハネ16形、オハネフ12形、それにグリーン車のスロ54形、普通車のスハ44形、スハフ45形を連ねた豪華な急行編成だった。
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