朝日新聞の中国侵略 山本武利著
戦争報道で新聞の部数が増えるのは古今東西を問わないが、日本では朝日新聞の「活躍」が目立った。もちろん軍部との露骨な協力関係は報道機関の中立性を損なう。いかに目立たず実を取るか。半世紀近くジャーナリズム研究に携わってきた著者が、膨大な蓄積資料の解読や中国、米国での資料渉猟を経て解明した朝日新聞の「中国進出」史。朝日が主導権を握り上海で刊行された『大陸新報』の創刊から敗戦後処理までの7年を詳細にたどり、部数を欲しがる新聞の宿命を見事に描き出している。
朝日に連載された「新聞と戦争」で語られなかった汚点も容赦なく追及され、朝日の大陸戦略が明確に見えてくる。大幹部の緒方竹虎がどのように考え行動したかが最大の焦点だが、戦後のイメージとかなり違った人物像なのも興味深い。軍部にとってリベラルな朝日は利用価値が高かったという落とし穴の怖さとリーダーシップの重要さがよくわかる。労作である。(純)
文芸春秋 1995円
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