東日本大震災の想像を絶する避難所生活、劣悪な環境で感染症蔓延も

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不衛生な避難所生活 すでに風邪が蔓延中

坂総合病院が2次救急医療機関としてカバーする多賀城市も、津波で甚大な被害を受けた。市面積の約2割が冠水、3分の1近い世帯が被災した。坂総合病院への応援で、同市内の避難所で診療に従事した山田智・立川相互病院副院長は、劣悪な衛生状態に驚きを隠さなかった。

「被災者は体育館とトイレを土足で往復し、換気も満足に行われていない」(山田副院長)。

山田副院長らのチームは、市内の多賀城小学校の避難所を訪れ診療を実施。3月23~27日の4日間での受診者は延べ78人に上った。この間の同小学校での避難者は200人前後であることから、かなり多くの患者がいたことが読み取れる。診断名では、「上気道炎」が39人に達しており、避難所での風邪の蔓延が裏付けられた。各地の避難所では「インフルエンザ」や「ノロウイルス」の感染が拡大する兆候も見えていた。

坂総合病院の今田隆一院長によれば、「病床がふさがりかけており、高血圧や糖尿病など、慢性疾患の持病を悪化させている患者さんも目立つ」という(右写真)。「震災後の生活環境悪化にぎりぎりまで我慢し、必要な薬も飲んでいない高齢者も珍しくない」(今田院長)。

1995年1月の阪神・淡路大震災では、震災から生き延びた高齢者などがその後病気をこじらせ死に至る事例が続発した。今回の東日本大震災は被災地域が広範囲に及び、さらに過酷な状況にある。政府は被災地の実情を把握したうえで早急に手だてを講じるべきではないか。


(岡田広行 =週刊東洋経済2011年4月9日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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