特急つばさや山形新幹線「板谷峠越え」列車の記憶 今も昔も難所、日本の鉄道「三大勾配区間」の1つ

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L特急「つばさ」板谷峠
関根―大沢間を走るL特急「つばさ」。現在この区間は山形新幹線が走っている=1988年(撮影:南正時)
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2023年春、山形新幹線用の新型車両E8系が姿を現した。現在試運転を行っており、2024年には営業運転に入る予定だ。新車のお目見えに先立ち、沿線最大の難所である福島・山形県境付近の板谷峠を長大トンネルで掘り抜く「米沢トンネル」(仮称)の整備計画推進でJR東日本と山形県が覚書を締結するなど、このところ山形新幹線に関する話題が多い。

そこで、山陽本線の「瀬野八越え」や今はなき信越本線の碓氷峠とともに、日本の鉄道の三大勾配区間の1つに数えられる山形新幹線(奥羽本線)板谷峠の歴史と、同区間を走った在来線特急「つばさ」や山形新幹線「つばさ」、そして数々の列車について述べてみたい。

勾配用の機関車が活躍した板谷峠

板谷峠に鉄道が開通したのは、明治中期の1899年のことだ。奥羽山脈を横切り、福島―米沢間を結ぶこのルートは、約22kmにわたり最大33.0‰(パーミル、1000m進んで33m上る)の急勾配が続き、赤岩・板谷・峠・大沢と連続する4駅はスイッチバックを余儀なくされた。また冬季は豪雪地帯の難所だった。

蒸気機関車時代は、勾配区間向け特殊設計のタンク式機関車4110形が活躍したことで知られる。同機は、1912年にドイツから輸入された4100形を基に改良を加えて国産化した機関車である。1948年には新型の勾配用タンク機関車E10形も登場したが、翌1949年、板谷峠を含む奥羽本線の福島―米坂間は直流電化された。電化後はEF15形電気機関車と、後に回生ブレーキを追加改造したEF16形が投入された。

1961年10月には、当時最新鋭のキハ82系気動車による東北本線・奥羽本線経由の特急「つばさ」(上野―秋田間)の運転が始まった。「つばさ」は福島―米沢間では補機としてEF16形、1964年に本格的勾配用機関車のEF64形が投入されてからは同機を連結して峠を越えた。当時の福島―米沢間の所要時間は下りで1時間12分を要した。1964年10月には上野―山形間に特急「やまばと」も登場した。

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