1992年に山形新幹線「つばさ」として投入されたのは400系電車で、初のミニ新幹線であるとともにシルバーメタリックのボディは話題となった。筆者は開業前後に集中して取材したが、なによりも奇妙に感じられたのは「新幹線」と呼ばれながらも400系が踏切を通過している姿だった。
次いで、1999年12月に山形―新庄間が延伸開業した際に現在活躍するE3系1000番台が登場。シャープな形状のE3系はスピード感がより増すとともに、400系では240kmだった新幹線区間の最高時速が275kmにアップした。2014年春には白地に紫色と赤色・黄色ラインの新デザイン車両が登場、車体には「さくらんぼ」が描かれより観光色の強い新幹線となった。
さらに同年の夏には、観光列車「とれいゆ つばさ」が福島―新庄間で運行開始した。「とれいゆ」という名称は「トレイン」と「ソレイユ」(太陽)とを合わせた造語だ。車内には足湯や掘りごたつタイプの座敷スペース、バーカウンターなどが設けられ、新幹線では珍しいリゾート列車だったが、残念ながら車両の老朽化を理由に2022年3月をもって運行終了してしまった。筆者は「とれいゆ」と山形の県花である紅花のツーショットを狙い、2021年の夏は沿線で紅花の咲く場所を探して回った。そして、引退が近づく「とれいゆ」と紅花を撮影することができた。
E8系登場、そしてトンネル構想は…?
山形新幹線の最新の車両は、E3系以来約25年ぶりとなる新形式のE8系である。デザインコンセプトは「豊かな風土と心を編む列車」といわれ、デザイナーの奥山清行氏が監修、川崎車両が製造を担当した。第1編成は2023年3月に報道公開され、同年度中は試験走行を行い2024年には営業運転に入る予定だ。最高速度は新幹線区間が時速300km、在来線区間は130kmとなっている。
板谷峠に挑んだ列車たち
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ED78形の牽く50系客車の普通列車。峠駅にて
=1988年(撮影:南正時)
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峠駅に停車するED78形牽引の普通列車
(撮影:南正時)
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峠駅のスイッチバックを通過するEF71形牽引の
普通列車=1988年(撮影:南正時)
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板谷峠を走るEF71形重連の貨物列車
(撮影:南正時)
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板谷峠を越えてきたEF71形牽引の
旧型客車による普通列車(撮影:南正時)
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福島駅で寝台特急「あけぼの」にEF71形を
連結するシーン(撮影:南正時)
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夜明けの奥羽本線を走る「あけぼの」の車窓
(撮影:南正時)
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板谷駅を通過する特急「つばさ」
(撮影:南正時)
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峠駅の構内。名物「峠の力餅」の売り子が見える
=1988年10月(撮影:南正時)
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峠の力餅、4代目店主の小杉隆秀さん夫婦
=1988年(撮影:南正時)
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峠駅最上屋4代目の小杉隆秀さん
(撮影:南正時)
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非電化時代に活躍した勾配用の4110形蒸気機関車。
写真は旧美唄鉄道の機関車(撮影:南正時)
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直流電化後に活躍したEF16形(前)とEF15形。
上越線にて(撮影:南正時)
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直流電化時に活躍したEF64形。
中央本線にて(撮影:南正時)
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庭坂付近を走る山形新幹線400系。新庄延伸後の
塗装変更後の姿だ(撮影:南正時)
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豪雪の峠を越えてきた400系「つばさ」
(撮影:南正時)
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新庄延伸10周年のヘッドマークを付けた400系。
関根駅にて=2009年(撮影:南正時)
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「つばさ」シンボルマーク
(撮影:南正時)
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ミニ新幹線化で普通列車も標準軌車両が導入された。
雪景色の中を走る719系5000番台(撮影:南正時)
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蔵王連峰と719系5000番台の普通列車
(撮影:南正時)
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登場時のE3系「つばさ」。新幹線総合車両センターにて
=1998年(撮影:南正時)
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シルバーのE3系「つばさ」が峠に向かう
(撮影:南正時)
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吹雪の山形平野を走る「つばさ」
(撮影:南正時)
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開業直後は「踏切のある新幹線」として話題を呼んだ
(撮影:南正時)
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初秋の吾妻連山を見て峠に望むE3系「つばさ」
=2012年10月(撮影:南正時)
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里山の風景を行くE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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シルバーから塗装変更されたE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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赤湯―高畑間を走る現行塗装のE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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田植え間近の水田地帯を走るE3系「つばさ」。
赤湯付近(撮影:南正時)
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残雪と新緑の吾妻小富士を見て峠に挑む。
庭坂付近(撮影:南正時)
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紅葉の中を行くE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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雪景色の板谷峠に挑むE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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吹雪の板谷峠を駆けるE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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板谷駅のスノーシェルターに進入するシーン
(撮影:南正時)
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新幹線では珍しかった観光列車「とれいゆ つばさ」
(撮影:南正時)
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「とれいゆ 」のロゴ
(撮影:南正時)
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車内に足湯があった「とれいゆ つばさ」
(撮影:南正時)
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「とれいゆ つばさ」の車内
(撮影:南正時)
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「とれいゆ つばさ」の車内
(撮影:南正時)
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「とれいゆ つばさ」の足湯を体験する筆者
(写真:南正時)
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「とれいゆ つばさ」の観光キャンペーン
(撮影:南正時)
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紅花が咲き誇る中を駆ける「とれいゆ つばさ」
(撮影:南正時)
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夏空の下咲き誇る紅花とE3系「つばさ」。
山形らしい風景だ(撮影:南正時)
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紅花とE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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紅花と419系5000番台の普通列車
(撮影:南正時)
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峠を下りて庭坂に向かうE3系「つばさ」
(撮影:南正時)
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峠を下りて庭坂に向かう400系「つばさ」
(撮影:南正時)
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峠を下りて庭坂に向かう485系「つばさ」
(撮影:南正時)
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山深い新緑の板谷峠
(撮影:南正時)
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赤湯からの勾配区間。水田が広がる絶景だ
(撮影:南正時)
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関根付近、豪雪の峠越え。里山の風景が和ませてくれた
(撮影:南正時)
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板谷峠名物「峠の力餅」の最上屋
(撮影:南正時)
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現在の峠の力餅は5代目夫婦が立ち売り販売している
(取材許可済・撮影:南正時)
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峠駅、スイッチバック跡のスノーシェッド
=2012年10月(撮影:南正時)
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山形新幹線の最新型E8系
(撮影:南正時)
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E8系の先頭部
(撮影:南正時)
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正面から見たE8系
(撮影:南正時)
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E8系の普通車内。山形の県花である紅花を
イメージしたカラーだ(撮影:南正時)
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E8系の運転台
(撮影:南正時)
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E8系公開に詰めかけた報道陣。地元メディアも多く
期待のほどがわかる(撮影:南正時)
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そのE8系が試運転を開始するより少し前、2022年10月にJRと山形県は福島―米沢間の板谷峠をぶち抜く長大トンネルを掘る計画の推進へ覚書を締結した。発表によると事業区間は庭坂―米沢間の約23kmで、工期は着工から15年を要し、事業費は約1500億円と見積もられている。以前の試算では、将来に向けてフル規格新幹線に対応可能なトンネル断面に広げる場合は、120億円の増額になるという。
実現にはまだ幾多の懸案事項をクリアすることになるが、このトンネルができれば「つばさ」の東京―山形間の所要時間は10分程度短縮される見込みだという。はたして、計画通りにトンネルが完成したあかつきには「つばさ」はどのような進化を遂げているであろうか。
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みなみ・まさとき / Masatoki Minami
1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。
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