中国の戦略的意図を感じるラオス中国鉄道の実態 国際列車の運転開始、観光地アクセスも向上

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ラオスと国境を接するタイのノンカーイへも行ってみた。ヴィエンチャン郊外のタナレーン駅とタイのノンカーイの間はタイ側が国際列車を1日2往復運行している。タイ側はラオス中国鉄道とは打って変わってアジアののんびりムードである。国境のメコン川に架かる友好橋は自動車と鉄道の併用橋で、列車通過のときだけ道路交通が遮断される。

以前は日本製ディーゼルカーで運転したが、現在は機関車の引く2両の客車である。機関車の付け替えが面倒な客車列車に変わった理由は、貨物輸送をはじめたからで、日によって貨物との混合列車になる。中国のコンテナが、ラオスを通ってタイに達しているのである。

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とはいえ、中国からの鉄道は標準軌なのに対し、タイの鉄道は狭軌、貨物列車は直通できない。そこで、タナレーンに積み替え設備ができていて、中国からラオス経由でタイへ向かう物流ルートはすでに機能している。こうして中国からタイへ渡ったコンテナは、東北線と東線を経由し、最終的に貨物専用線を通ってタイ最大の貿易港レムチャバン港へ達するのである。

いっぽう、旅客視点では、ヴィエンチャン駅からタナレーン駅までを何らかの方法で移動すれば、中国国境のボーテン駅を昼に出発、ラオス・タイ国境を行く国際列車を介して、ノンカーイからの寝台列車に乗り継げるので、中国国境を出発した翌朝にはバンコクに到着できる。ラオス北部からタイ、マレーシア、シンガポールと乗り継ぐ列車の旅も可能となった。

待望の中国ーラオス間の直通運転開始

こんなラオス中国鉄道だが、2023年4月13日に中国―ラオス間の国際旅客列車運行も開始された。ラオス国内区間が約400kmであるのに対し、中国側は600km以上あり、昆明南―ヴィエンチャン間は1000km以上、そこを10時間半かけて運転される。列車は直通するが、国境駅で旅客はいったん下車し、入国審査を経て列車へ戻る。これで中国からラオスは気軽な海外旅行先となり、古都ルアンパバーンなどは大勢の中国人観光客で賑わうのであろう。新たな観光ルート誕生に思われる。

鉄道ファン視点では、ヴィエンチャン駅からタナレーン駅まで何らかの方法で移動すれば、中国国境のボーテン駅を昼に出発、ラオス・タイ国境を行く国際列車を介して、ノンカーイからの寝台列車に乗り継げるので、中国との国境を出発した翌朝にはバンコクに到着できる。また、北京や上海から昆明へ、さらにこのルートを乗り継ぎ、バンコクからはマレーシア、シンガポールへと鉄道を乗り継ぐことで、アジアで壮大な鉄道の旅も可能となったのである。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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