中国の戦略的意図を感じるラオス中国鉄道の実態 国際列車の運転開始、観光地アクセスも向上
いろいろ課題はあるものの、ラオス中国鉄道の利便性は大きい。もっとも利便性が向上したのは外国人観光客であろう。首都ヴィエンチャンから山岳リゾートのヴァンヴィエンへは日帰り可能となった。
ラオスを訪れる観光客の多くは目的地が古都ルアンパバーンであるが、どんなに駅が遠くても、列車に乗れば1時間半から2時間で到着できるのは大きな進歩である。
首都ヴィエンチャンと古都ルアンパバーンの間を道路移動すると、「VIPバス」ですら旅館送迎のようなマイクロバスで、10時間を要する。大きな荷物は屋根上である。多くの旅客は空路を選ぶが、飛行機が小さく便数も少ないので、いつも混雑している。そこに輸送力の大きな鉄道が開通したのだから、飛躍的に便利になったことは間違いない。
列車撮影はできるか?
鉄道ファンには気になるであろう撮影事情も記しておこう。駅や車内の撮影は自由であるが、ひとつ鉄道ファンには大きな障害がある。それは停車している列車の正面が撮影できないことだ。正確にいえば、停車中は必ず駅員か乗務員が列車のドア近くにいて、最前部または最後部のドアより先に行かせないのである。なので、列車の顔というべき前面が撮れない。理由を訪ねてみたが「ルールだから」という答えが返ってくるだけであった。
しかし、撮影禁止ではないので、途中駅から乗車する際、入線する列車が唯一のチャンスと思ってもらいたい。停車してしまうと撮影できない。
では、走行写真はというと、これがなかなか難しかった。線路をまたぐ陸橋はなく、そもそもラオスには道路同士の立体交差すらない。駅も遠く、市街地をほとんど走らないため、撮影場所へ行く交通手段もない。
そこでヴィエンチャン空港到着時に利用した空港タクシーに話を持ち掛けてみた。空港タクシーの運転手は英語を理解できるので、こちらがやりたいこともだいたいわかってくれる。グーグルマップでおよその場所を示し、翌早朝に目星をつけた場所へ車を走らせてもらった。しかし、途中から舗装道路はなくなり、タクシーでの移動は難しくなってしまった。
最終的には歩くことにし、犬、鶏、牛が歩き回るような未舗装の生活道路を進むと、10分ほどで視界が開け、何とか築堤を行くヴィエンチャン発7時30分の特急列車と8時発の普通列車を撮影できた。
ボーテンで高架橋を行く写真は、駅前にいた白タクの運転手に、かすかに見えている高架橋を指さし、写真を撮りたい旨を絵やジェスチャーを交えて説明し、車で行って、撮影中待ってもらい、駅に戻ってもらったのである。
乗車した列車のボーテン着が11時2分、高架橋を行く特急列車が12時15分発、山をバックに機関車牽引の普通列車撮影が13時10分着、そして14時発の列車でルアンパバーンへ向かったが、すべての列車が定刻だったので、時間配分もドンピシャであった。ボーテンでは14時発の列車がその日の終列車、周辺に宿泊施設などありそうもなかったので、失敗はできない状況だった。
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