住信SBIネット銀、「1年越し上場」の理想と現実 銀行かテック企業か、市場と会社の見解に「溝」

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事業会社にとっては、銀行免許の取得や金融サービスの開発をすることなく、自社アプリに銀行口座の開設や融資、カード決済といった機能を搭載できる。JALや高島屋など15社で導入が決定し、今後20社まで増える公算だ。

住信SBIネット銀にとってBaaSは、口座数に応じた手数料を受け取れるだけでなく、提携先企業が抱える顧客網にアクセスし、金融サービスを提供する機会になる。提携先にはオープンハウスや野村不動産ソリューションズといった不動産会社も散見されるが、これは住宅ローンの利用促進が念頭にある。

住信SBIネット銀行の経常利益推移

今後は、銀行の顧客情報やBaaSの提携先企業から得たデータの利活用を模索する。2023年1月には、顧客ごとのIDに紐付いた広告を表示するサービスを開始した。金融とテクノロジーを掛け合わせて成長を企図し、2022年3月期に232億円だった経常利益を、2025年3月期に400億円以上へ伸ばす計画だ。

既存の金融機関とは一線を画したテック企業を自認する住信SBIだが、円山社長は「現在は『銀行』としてしか評価されていない」と語った。 「一昨年からテクノロジー業界、特にフィンテック企業の株価が下落している」(円山社長)こともあり、市場から独自のビジネスモデルを適切に評価してもらえなかったというわけだ。

金融不安で評価が急減

住信SBIネット銀が上場を目論んだのは「2度目」だ。元々は2022年2月15日に東証から承認を受け、同年3月24日に上場を果たす予定だった。青天の霹靂だったのは、2月下旬に勃発したロシアによるウクライナ侵攻だ。株式相場の下落を受け、上場中止の決断を余儀なくされた。

1年越しの再挑戦は、またしても不運に見舞われた。ロードショー(機関投資家向け説明会)の最中だった3月、欧米の金融機関が相次いで信用不安に陥ったためだ。

円山社長は「心安まる日はまったくなかった。ただ、さすがに(上場の)再延期はしない。何としてもやり切るという思いだった」と振り返る。知名度向上やストックオプションなどインセンティブ制度の導入を考慮すれば、上場時期をずるずると引き延ばすことはできなかった。

結局、投資家からの評価は1年前と様変わりした。ハイテク株に対する風当たりが強まり、時価総額は2022年に申請した際に想定された3000億円規模から3分の2に縮小した。

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