津波で下水処理場、ゴミ焼却施設に大きな被害、想像を超える宮城県内各施設の被災状況
東日本大震災の被災地では、電気、水道、通信などのインフラの復旧がゆっくりとしたペースではあるが進みつつある。それとは裏腹に、津波による損壊が大きかった下水道、ゴミ焼却施設は復旧が難航。市民生活再建のうえで大きな足かせになっている。
宮城県では、下水道については、県内に7つある処理場(浄化センター)のうち、仙塩浄化センター(仙塩流域下水道→被災状況写真はこちら)、県南浄化センター(阿武隈川下流流域下水道→被災状況写真はこちら)、石巻東部浄化センター(北上川下流東部流域下水道→被災状況写真はこちら)の3処理場(流域人口約60万人)が津波による水没で機能を停止。うち県南浄化センターは、設備が全壊した。
県土木部下水道課によれば、「県南浄化センターでは機械や配管、電気設備がすべて損壊。仙塩浄化センターおよび石巻東部浄化センターは津波の破壊力こそさほどではなかったものの、水が2階まで上がり、電気系統が破壊されている」という。
現在、3施設とも復旧に向けて作業に着手したが、「従来の浄化方法に戻るまでに2年はかかる。その間は汚水を沈澱させて上澄みを放流する簡易処理によらざるをえない」(同課)。
だが、簡易処理にこぎ着けるのも容易ではない。汲み上げポンプ(メインポンプ)の復旧に時間がかかるため、「その間はマンホールからの消毒だけで放流したり、上流に簡易な沈澱池を掘って、消毒放流する方策を講じていく」(同課)。
大地震とそれに続く津波で甚大な被害を受けた石巻市などでは、地盤沈下も起きたことで、市街地から水が引かなくなっている。「下水の逆流は今のところあまり起きていない」(同課)というものの、大雨が降った場合、市内に下水があふれる恐れもある。そのため、県では仮設ポンプを増設して汲み出しを進めているが、今後、水道やガスも復旧が進んでいく中で、流入流量の増加に頭を悩ますことになる。
宮城県下水道課は県民に対して、「食器を洗う水を減らす」「トイレで使用した紙は燃えるゴミに出す」などにより「なるべく下水道に排水をしないようにしてほしい」と呼びかけを開始。マンホールから下水があふれる事態の回避に全力を尽くしている。
一方、家庭ゴミの処理では、震災後、収集作業を縮小したり中止していた宮城県内市町村が半数以上にのぼっていたが、4月1日までにほぼすべての自治体が収集の再開にこぎ着ける見通しだ。