鉄道旅行の友「海外の小ホテル」今はこう泊まる 宿へ直接行って「今晩泊まれますか」は過去の話

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いっぽう、以前、『海外旅行の物価高対策、「ドミトリー」のすすめ』という記事を掲載したが、ドミトリーの宿は、施設が狭くても一般に宿泊者数が多く、スタッフが常駐していることが多い。バックパッカーや観光客の集まる宿では、その地域の観光、アトラクション、交通機関などの手配も行っていて、いわば宿が旅行会社の業務も兼ねていることが多いので、スタッフが多めに必要なのである。

ドミトリーの宿泊施設では、料金の安い宿のほうが、むしろスタッフが常駐しているとも感じる。さまざまな旅行手配によって宿泊代金以外で稼いでいるからである。

宿の良し悪しはレビューを参考に

良い宿の選びかたは、ホテル検索サイトでの宿泊者のレビューを参考にするのがすっかり一般的になった。

ホテル予約サイトでは、料金の安い順に並べ変えることができるが、それだと「安かろう悪かろう」の宿が上位に来ることが間々ある。そこでおすすめは、レビューの高評価順に並べ、評価の高かった宿のなかから場所や値段で選ぶのが、いい宿を選択する方法ではないかと思っている。

その際に注意したいのはレビューの数で、「すばらしい」と高評価であってもレビュー数が10程度だと、その評価は怪しいと思ったほうがいい。いっぽう、「とても良い」「良い」程度であってもレビュー数が100もあれば、多くの人が満足している宿ということになり、その評価は信頼できるといっていいのである。

選択した宿の評価も「清潔」「スタッフが親切」「駅に近い」など、その理由を読むと参考になる。いい評価はあまり参考にならないので、悪い評価を見て「何が問題だったのか」を見ておきたい。たとえば、鉄道で旅をしていて「駐車場がない」などは問題ではないからだ。

世界中の人の評価なので、それぞれのお国柄も見えてくる。日本人やドイツ人などは駅から近ければ便利ということで高評価になるが、自然が大好きなスイス人やノルウェー人などは駅から遠いホテルが「駅から遠いので静かな環境」と、高評価になっていたりする。

このホテル予約サイトでの評価は、宿側も気にしているようで、高評価の宿は、高評価である旨のカードなどを玄関やレセプションに置き、自慢げに飾ってある。私の経験からも、高評価の宿は泊まってみて「なるほど」と思うことが多い。

近年、このホテルレビューを見ていて感じることは、日本人のレビューが少ないことだ。日本人の海外旅行者が減っていることを端的に感じる。いっぽう、韓国、中国、マレーシア、インドネシア、インドの人たちなどのレビューが多くなった。どうしても同じ日本人のレビューがもっとも参考になるので、宿泊したら、ぜひ率直なレビューを記して欲しいと思う。

物価高から宿泊施設の料金が以前より割高になっている国が多く、日本人の海外旅行は慢性的に「安・近・短」志向になったとも感じる。しかし、滞在費の大きな部分を占める宿泊に強くなれば、少々長めの滞在期間でも財布の負担は軽減できる。旅行代金をセーブする意味でも、さまざまな宿泊施設をうまく使いこなして旅をしたいものである。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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