「統合抑止戦略」から見えるアメリカの身勝手さ 代理戦争をそそのかし、はしごを外すアメリカ

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代理戦争なら、アメリカは自分の手を汚さずに済み、中国と台湾、それに日本の「アジア人同士」の戦いになる。台湾問題で前面に出つつある日本は「ハシゴ外し」に遭う。

代理戦争説を補強する材料はいくつかある。バイデン政権は、米ロによる中距離核戦力(INF)全廃条約の失効を受けて、中距離ミサイルを日本に配備する計画を明らかにした。だが、岸田政権が「敵基地攻撃能力」の保有を明言し、アメリカ製トマホーク400発を購入する計画を発表した直後の2023年1月、アメリカ大統領報道官は「現時点で日本へ配備する計画はない」と述べた。

中距離ミサイルと兵器貯蔵は沖縄で

もう1つは、アーミテージ元国防次官補が2022年6月、「台湾有事があれば、アメリカが台湾に送る武器や物資を日本で保管できるようにしたい」と、武器・弾薬を南西諸島に貯蔵する案を提案、浜田靖一防衛相も同年9月、それを認める発言をした。「台湾有事」の正面に日本、とりわけ南西諸島が前面に出る態勢が整い始めた。

冒頭に触れたが、統合抑止戦略は同盟国に大軍拡を求める一方、自らは軍事衝突の正面からの退場すら計算に入れた「身勝手」戦略という疑念が拭えない。大義のないイラク侵攻から20年。2年前のアフガン完全撤退で、海外派兵によって「アメリカ一極支配」を維持する時代は終わった。

トランプ政権誕生と3年におよぶコロナ禍も手伝い、アメリカを頂点とする先進国中心の主要7カ国(G7)の衰退が加速し、中国を含めた新興国群「グローバルサウス」が、国際秩序形成で頭角を現す。バイデン政権は、国内対立を棚上げして団結を確保するため、中国という「外敵」を共通の敵にする御旗は下ろせない。しかし中国と軍事的に衝突する以外の選択肢はどんどん減っていく。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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