破綻銀行を食い物にした「ゴールドマン」極悪取引 SVB相手の破廉恥な取引が追及の的になる必然
3月初め、ムーディーズから信用格付けを引き下げる可能性があると内々に警告されたSVBは、財務を改善するべくゴールドマンに助言を求めた。ゴールドマンは含み損を抱えた債権を買い取るのと同時に、アドバイザーとして資本市場での資金調達に乗り出した。ところが、SVBが債券売却で18億ドルの損失を計上したことを公表すると、株価が急落。増資はほぼ不可能になった。
「皮肉だったのは、債券の損失計上に増資計画の発表が重なったことで、投資家をさらに不安にさせたことだ」と、企業統治に詳しいコロンビア大学ロースクール教授ジョン・コフィーは話した。
投資銀行に巣くう利益相反
投資会社は、ゴールドマンの今回の取引がそうだったように、複数の役割を同時に担うことが少なくない。消息筋によると、ゴールドマンは今回の債券取引でSVBに追加で別のアドバイザーを雇う機会を提供したが、SVBは断ったという。
顧客のために複数の役割を担う金融機関は、それぞれの役割の間に壁を維持しながら職務を果たしていると説明するのに腐心している。しかし、救急車サービスのルーラル・メトロの経営陣に会社売却を指南する一方で、買収企業への融資提供に動いていたことが発覚したカナダロイヤル銀行のように、こうした取引は法的な追及を招く可能性がある。
「いくつかの事案で、投資銀行は複数の役割を同時に担うことで顧客に誤った助言をしたとして責任を問われてきた」と、会社法が専門のコロンビア大学ロースクール教授エリック・タリーは語った。「ただ、今回の件に関しては、債券売却と増資は、より大きな1つの戦略を支える2本の柱だったように思える」。
もっとも、だからといって政治的な追及を止められるわけではない。争点の1つは、連邦政府がSVB経営陣の報酬受け取りを阻むのかどうかだ。
上院議員のエリザベス・ウォーレン(民主党・マサチューセッツ州選出)らは、経営陣の賞与と、破綻前の数週間に自己株を売却して得た利益の返還を求めている。破綻の経緯を調査している司法省も、報酬を返還させるための試験的なプログラムを公表した。バイデン政権は一部の人々が「救済」と呼ぶ今回の措置によって、すでに反発にさらされるようになっている。
ゴールドマンが受け取る手数料にこうしたハイレベルな議論が直接絡んでくるのかどうかは不明だが、政治家がゴールドマンの取引に注目して論争を巻き起こすのは確実な情勢だ。
(執筆:Andrew Ross Sorkin記者、Lauren Hirsch記者)
(C)2023 The New York Times
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら