カネボウとJAL、今だから知りたい明暗の裏側 ともに大型倒産、その後は何が違ったのか

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これら一連の粉飾事件の一因として、監査法人の担当リーダーが10年にわたって同一人物だったことが問題視された。粉飾決算を指南した中央青山監査法人の公認会計士4人は、証券取引法違反で逮捕された。2006年には、同監査法人は金融庁から業務停止命令を受け、後に解散に追いやられている。

カネボウは、結局、2007年6月30日に清算決議し、同時に社名を「海岸ベルマネジメント」に変更した。その後、2008年11月11日に、トリニティ・インベストメントに清算目的で吸収合併されて121年の歴史に幕を閉じた。

カネボウの最後のトップとして無我夢中で走り続けた中嶋は、心労もあったのか、2019年8月に69歳で息をひきとっている。

リーマン・ショックだけではないJAL破綻の原因

証券業界にとって、2010(平成22)年のJALの破綻は、想像すらできない衝撃的事件だった。何があっても潰れることなど考えられない、国策会社の倒産劇だったからだ。

2010年1月19日の倒産発表の日に、当時のJALの社長が、テレビの前で深々と頭を下げていた姿は、今でも筆者の脳裏に鮮明に刻まれている。また、従業員5万2000人のうち、1万6000人を人員削減した折に、制服姿のJALのキャビンアテンダントの一人がお別れの花束を抱えて、廊下をうつむき加減に歩いていた寂しげな姿も忘れられない。

それは、総額2兆3221億円の負債を抱えての倒産でもあり、一般株主の所有していたJALの株式の価値がゼロになった瞬間でもあった。

JAL倒産の直接のきっかけは、2008年のリーマン・ショックで、ビジネスマンなどの移動が激減したことなど、世界経済がシュリンクした(縮んだ)結果にあったことは否定できないだろう。だが、2007年に解散した産業再生機構とほぼ同じ機能を持つ企業再生支援機構の委員長であり、JAL管財人統括の瀬戸英雄弁護士は、倒産の原因を次のように分析している。

「バブル経済が崩壊し、また、世界の航空会社の事業形態が変化するなかで、かつて成功した大型機材の大量保有による少頻度大量輸送モデルの事業構造は、硬直化し、不採算路線の撤退もできず、その一方で、肥大化した組織と余剰人員を抱え、賃金体系は不均衡が生じるなど、非効率な高コスト体質に陥っていた。(中略)リーマン・ショックに端を発する金融危機、さらには新型インフルエンザによる急激な世界規模の航空需要の低迷は、同社の経営に深刻なダメージを与えた」

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