企業は事業継続のための計画(BCP)と投資を積極化せよ

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 今回の震災発生を受けて、しばらく忘れかけていた首都直下型地震という言葉を思い出した人は少なくないはずだ。

首都圏は単なる一地域ではない。わが国全体の経済活動に多大な影響を及ぼすエリアであり、単にその地域の企業に被害が発生したというだけでは済まない。まずこのことを明確に認識しなければいけない。

その点で、個別企業の対応は極めて重要である。しかし05年以降、有効なBCP体制の構築が要請されたにもかかわらず、的確な体制が迅速に整備されたかどうかといえば、心もとない面があるのではないか。その原因の一つが、BCPが「前向きな投資」に位置づけられなかった点にある。

特に上場企業の場合、直接的には利潤拡大に結び付かないような巨額投資に対する「株主への説明」は容易ではなかったはずだ。実際、企業の内部からも、BCP関連の投資に対するコンセンサスは得にくいという声が出ていた。その結果、十分な体制を整備していない企業も少なくない。

しかし、社会的な影響力が大きい企業にとって、業務の安定的遂行による商品・サービスの提供は、利潤拡大と同じほど重要な使命のはずだ。欧米諸国の中には、BCPが環境対策などの社会的責任会計に匹敵するほどの、企業価値を計る尺度となっている国もある。

株式市場でも、利益拡大や利潤規模だけにとらわれず、BCP体制の構築による事業継続能力も、投資尺度の一つと位置づけてよい。あらゆる方向で今回の震災の犠牲者に報いるために行うべきことは、たくさんある。

(シニアライター:浪川 攻 =週刊東洋経済2011年4月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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