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西ヶ谷: 医薬は1970年代から、多分何百件、何千件とそういう前例があるので、コンサルティング会社が把握していて、こういう場合は大体いくらになるという相場があるんです。
ところが農薬は相場がないので、どこまでやったら幾らになるかという評価が難しく、投資が進みません。
ピクサーのビジネスモデルも”模倣”
井上:お話を伺っていると、医薬の先進的な仕組みをいかにして農薬の世界に持ち込むかがカギですね。私は「模倣の経営学」という言い方をしていて、先進的な異業種からビジネスモデルを模倣しよう、と言っています。そういった発想もお持ちでしょうか。
西ヶ谷:異業種といえば、ピクサーのビジネスモデルも参考にしています。
彼らは一つの映画作りをパイプラインと呼び、ディレクターとプロデューサーをつけ、権限を与えて独立採算で走らせている。映画ごとに外部から資本も入れ、何年後かに投資を回収する仕組みです。
興業収入を出資者と分けあい、グッズを作る権限を与えるというのは、まさしく医薬や農薬と同じです。このやり方は、とても参考になる。製薬会社のパイプラインや創薬プロジェクトの担当者についての本はほとんどありませんが、映画については、結構いろいろな本が出ているのでチェックしています。
井上:なるほど、ハイリスク、ハイリターンのビジネス、知財のビジネスには共通点があるわけですね。とても面白いです。今後の展開を楽しみにしています。
アグロデザイン・スタジオ 設立:2018年3月 所在地:千葉県柏市 資本金:1億円(資本準備金含む) 社員数:13人(グループ含む) 投資ラウンド:シリーズA(2023年4月時点)
経営学者・井上達彦の眼
アグロテックデザインは、医薬で起こったイノベーションを農薬にインポートすることで農薬の危険性や人体への悪影響を最小限にしようとする。成果報酬型のビジネスモデルによって必要な資金を集め、世界に挑戦しようとしている。ただでさえ農薬ベンチャーが少ない現代においては奇特な存在であり、分子標的法に絞っている点でトップランナーの1人といえるかもしれない。
このような模倣者は、パイオニア・インポータと呼ばれる。パイオニア・インポータというのは、他の地域や製品市場において、自身を最初の参入者として確立した新参者のことである。
企業というのは、特定の国や地域の業界において活動を行っている。よそから持ち込まれたものは、たとえ、すでに別のところで存在していたとしても、持ち込まれた側にしてみれば新しいものとなる。
「持ち込み」における新規性は、自らの世界での一番手となることから生まれるのだ。海外から仕組みを模倣するにしても、異業種から仕組みを模倣するにしても、自分の世界では最初となるわけだから、当然である。
他社からはなかなか模倣できない仕組みであっても、調べてみると、大なり小なり模倣によって築かれているものだ。模倣できない仕組みが模倣によって築かれるという、模倣のパラドクスである。
農薬というと黒騎士のイメージが強いが、農薬の先入観を覆すような白騎士として農業の生産性に寄与するのか。今後の成長が楽しみである。