「この複雑な世界を、複雑なまま生きることはできないのだろうか」。詩的な言葉で始まる一風変わった学術書だ。著者が構想するのは、二項対立の価値観から解放された「なめらかな社会」、300年後の未来像である。
AでありBでもあることを許容
──なめらかな社会とは、どんな社会ですか。
まず、なめらかではない状態について説明したい。簡単にいうと、AかB、どちらか一方しか選べない状態はなめらかではない。例えば、「米国人だったら日本人じゃない」「日本人だったら米国人じゃない」といった状態だ。なめらかな社会は、そうした二項対立に陥らず、「Aであると同時にBでもある」ことを許容する。
仕事においても同様だ。今のメンバーシップ制の下では多くの場合、同業の複数の会社で同時に社員となるのは難しい。だが、なめらかな社会では、例えば東洋経済新報社の社員であり日経BPの社員でもある、という状態が特段の摩擦なく実現する。
──なぜそういった社会が望ましいのでしょうか。
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