「きれいなグラフ」鵜呑みにせぬリテラシーが重要 『データ思考入門』著者の荻原和樹氏に聞く

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グーグル ニュースラボ ティーチング・フェロー 荻原和樹氏
荻原和樹(おぎわら・かずき)/グーグル ニュースラボ ティーチング・フェロー。1987年生まれ。筑波大学卒業後、東洋経済新報社に入社。2017年英国エディンバラ大学大学院修了(修士)。データ可視化を活用した報道コンテンツの開発、デザイン、記事執筆を行い、グッドデザイン賞などを受賞。スマートニュースを経て22年から現職。(撮影:今井康一)
データビジュアライゼーション、データ可視化と聞くと何やら難しそうに思えるが、要はグラフや地図などを用いてデータをわかりやすく、視覚的に表現すること全般を指す。その専門家である著者は、データを正しく読み、効率的に情報を伝えるための力を「データ思考」と呼ぶ。

伝えたい情報やメッセージを誤解なくわかりやすく

データ思考入門 (講談社現代新書)
『データ思考入門』(荻原和樹 著/講談社現代新書/990円/240ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──文系ビジネスパーソンもデータを見ない日はありません。

私たちが「データを見る」というとき、それをグラフや地図などに変換する「データ可視化」が念頭にある場合は多い。このとき重要なのは、可視化の工程で基のデータに何らかの「編集」が行われている、という視点だ。

自分でグラフを作るときも、与えられたデータ全部を見える形にすることはめったにない。まずはデータを選び、絞っていく。私はコロナ禍初期に「新型コロナウイルス 国内感染の状況」というダッシュボードを、当時在籍していた「東洋経済オンライン」上に作った。ダッシュボードとは、複数のグラフや地図を一元化して表示するもので、これを見ると感染状況が一目でわかる。基にしたのは厚生労働省が発表しているデータだが、使ったのは公開データのすべてではない。非専門家、一般の人が利用しやすいようデータを絞り込んだ。

自分や大切な人が感染するリスクについて知りたい。そのニーズに応えるのは、国内の「市中感染」の状況を示すデータだろうと考えた。それなら、国外からのチャーター便で帰国した人や空港検疫も含む合計感染者数のデータは使わない。

人が「全体像を知りたい」と言うとき、それは必ずしも合計の数値そのものであるとは限らない。求められている情報が本質的に何なのか、どうすれば自分の伝えたい情報やメッセージを誤解なくわかりやすく伝えられるのか。そのための思考法を、本書では「データ思考」と呼んでいる。

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