「座間事件」の被害者が殺人鬼にひかれた構造 『「死にたい」とつぶやく』著者の中森弘樹氏に聞く

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立教大学准教授の中森弘樹氏
中森弘樹(なかもり・ひろき)/立教大学准教授。1985年生まれ。2015年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間・環境学)、主な著書に『失踪の社会学—親密性と責任をめぐる試論』。同書により、日本社会学会第17回奨励賞などを受賞。(撮影:今井康一)
2017年、神奈川県のアパートからクーラーボックスに入った9人の切断された遺体が見つかった。「座間9人連続殺害事件」の犯人・白石隆浩はツイッター上で「死にたい」とつぶやく女性に声をかけ、一緒に死のうなどと偽りの提案をして自宅に誘い出した。被害者たちは、なぜ白石に会いに行ったのか。
「死にたい」とつぶやく:座間9人殺害事件と親密圏の社会学
『「死にたい」とつぶやく:座間9人殺害事件と親密圏の社会学』(中森弘樹 著/慶応義塾大学出版会/1980円/328ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──なぜ座間事件に着目を?

考察しないわけにはいかなかった。前著の『失踪の社会学』では、親、配偶者、恋人などとの二者関係が死ぬほどつらいとき、この「親密圏」の外にいる第三者に連れ出してもらうことで逃げられる、と結論づけた。現代では失踪のような行為が求められるフシがあると、部分的に肯定したのだ。

ところが、本の発売から約半月後に発覚したのが座間事件だ。犯人の白石は、私が指摘した第三者の持つ可能性の負の側面を最悪の形で体現したといえる。

失踪を単に肯定すれば、悩んでいる人をこうした危険人物に遭遇するリスクにさらすことになる。そこで「死にたい」とつぶやく人が親密圏から第三者に連れ出されがちなメカニズムを考え始めた。

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