2017年、神奈川県のアパートからクーラーボックスに入った9人の切断された遺体が見つかった。「座間9人連続殺害事件」の犯人・白石隆浩はツイッター上で「死にたい」とつぶやく女性に声をかけ、一緒に死のうなどと偽りの提案をして自宅に誘い出した。被害者たちは、なぜ白石に会いに行ったのか。
──なぜ座間事件に着目を?
考察しないわけにはいかなかった。前著の『失踪の社会学』では、親、配偶者、恋人などとの二者関係が死ぬほどつらいとき、この「親密圏」の外にいる第三者に連れ出してもらうことで逃げられる、と結論づけた。現代では失踪のような行為が求められるフシがあると、部分的に肯定したのだ。
ところが、本の発売から約半月後に発覚したのが座間事件だ。犯人の白石は、私が指摘した第三者の持つ可能性の負の側面を最悪の形で体現したといえる。
失踪を単に肯定すれば、悩んでいる人をこうした危険人物に遭遇するリスクにさらすことになる。そこで「死にたい」とつぶやく人が親密圏から第三者に連れ出されがちなメカニズムを考え始めた。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら