賃上げラッシュ「ニッポンの給料」に起こる大異変 26年ぶり高水準、春闘に異例の熱視線が集まる

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ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済研究部経済調査部長は、「23年春闘は定昇を除くベースアップ(基本給引き上げ)が最終的に1%強にとどまる。賃上げ率は2年連続で消費者物価の伸びを下回る公算が大きい」と指摘する。

電力会社各社が4月以降、料金を値上げすることも消費者物価の押し上げ要因となる。定昇込みで5〜10%レベルの賃上げを表明している一部の大企業を除き、「名目賃金は伸びても、実質賃金は減少しそうだ」(斎藤氏)。

ユニクロの店舗外観
ファーストリテイリングは年収を最大4割引き上げる(撮影:今 祥雄)

24年も流れは続くのか

この先賃上げは、インフレが鎮静化した後も持続するのか。答えはイエス、といえるようなデータがいくつか存在している。

アベノミクス期にあたる12〜19年の間に雇用者数(役員除く)は約500万人増加した。増加した雇用者の7割を非正規が占めるものの、労働力率の高い生産年齢人口(15〜64歳)が少子高齢化で減り続ける日本経済において、これは福音だった。

しかしこの間、労働力人口の大幅な増加が続いたのは、高齢者と女性の労働力率が上がった影響が大きかった。65〜69歳の就業率は21年に初めて50%を超え、低調だった女性の労働参加も欧米先進国を抜いた。出産・子育て期に労働力率が落ち込む「M字カーブ」はほぼ消滅した。

BNPパリバ証券の河野龍太郎・チーフエコノミストは、「年金の支給開始年齢が引き上げられ働かざるをえない人が増えたことなど、いくつかの要因が重なった結果だが、日本の労働供給はいよいよ掘り尽くされ、限界に近づいてきている」と分析する。

労働需給が逼迫すれば、一般的に採用は売り手市場となり、賃金は上昇する。ただ政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」を始めても笛吹けど踊らず、実質賃金は13〜18年度平均で前年比0.4%のマイナスだった。

この要因は、賃金水準の低い非正規労働者の比率が上がったことが、平均賃金を押し下げたからなどといったさまざまな分析がある。アベノミクスでの追加的な労働供給の押し上げ余地は限定的であり、これからは本当の人手不足がやってくる可能性が高い。

24年の賃上げについては、ニッセイ基礎研究所が3%、大和総研が2.9%など大手シンクタンクは今のところ23年並みの水準を予測する。企業業績や輸入インフレの動向次第だが、2年連続で直近の比較では高水準の賃上げが行われるとの見立てだ。

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