地方創生の限界は、いったいどこにあるのか 自治体問題の権威が安倍政権の政策に警鐘

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――「平成の大合併」に巻き込まれず、活性化に成功した自治体はありますか。

いくつもある。早くから自治体と住民が協同で地域づくりに取り組み、人口を維持、増加させてきたところだ。

(写真:TATSU / Imasia)

たとえば、宮崎県の綾町。前田穰町長(全国小さくても輝く自治体フォーラム会長)が先頭に立って人口定住対策に取り組んできた。「地域の経済2014」(内閣府)の中でも、2010~2013年の間に人口が増加した地域として紹介されている。

綾町は、戦後ダム建設が終了して以降、人口が減り始め、一時期は「夜逃げのまち」と言われた。だが1970年頃から、自治体と住民が一緒になって、日本でいち早く有機農業を推進。東京と福岡の生協との連携ができたことで軌道に乗った。さらに宮崎の著名な蔵元である雲海酒造が、清浄な水と土に注目して立地、テーマパーク「酒泉の杜」を造った。さらに芸術家の移住がなされ、スポーツ合宿で賑わう町になっている。昨年のふるさと納税は、8億円を超し、全国4位になっている。

同じ宮崎県の西米良村も、1994年時点の厚生省の将来人口推計では2010年に750人程度まで減るとされていた。実際には、2015年2月時点の人口は1230人だ。西米良村の取り組みの主軸は、1998年に全国に先駆けて始めた「ワーキングホリデー制度」だ。村の農家が若者を受け入れ、農業体験をしてもらう。

これまでに約400人がワーキングホリデー制度を利用し、中には西米良村に定着する人も出てきた。黒木定蔵村長は常々、「村づくりの目標は人口増加ではなく今住んでいる人たちの幸福度を上げること。結果として人口が増えるのは歓迎だ」と話している。

人口減をもたらす最大の要因は少子化

――小規模な自治体だからといって、東京への人口移動が自然に進み、自然に人が減っていくわけではないということですね。

自治体と住民が力を合わせ、地域内で再投資できる仕組みを作れば、仕事と所得が生まれて地域は活性化する。こうした地域で、人口がどんどん減っていくということはない。

増田レポートの弱さは、人口減少要因の分析が甘いことにある。

人口減をもたらす最大の要因は少子化だ。少子化の大きな要因のひとつが、非正規雇用の増加である。「ワーキングプア(正社員並みの労働をしても生活維持が困難なほどしか収入を得られない層)」という言葉は、第一次安倍内閣時代に生まれた。

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